1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640596
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
辻 誠一郎 国立歴史民俗博物館, 歴史研究部, 助教授 (20137186)
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Keywords | 植生史 / 埋没林 / 森林泥炭 / 最終氷期 / 古植生 / 年輪年代学 |
Research Abstract |
埋没林・森林泥炭から森林・植生の更新および構造解析を行うための方法を開発するために,秋田県大館市池内遺跡と長野県軽井沢町成沢の火山灰に覆われた埋没林・森林泥炭(埋没土壌を含む)および青森県西津軽郡西海岸の水位変動によって枯死埋積した埋没林・森林泥炭を研究対象として取り上げ,以下のような成果を得ることができた。 1.秋田県大館市池内遺跡では約13,000年前の八戸テフラ(火砕流)に覆われた森林・植生の構造解析のために,直線幅約100mに及ぶ断面で検出できる埋没株・幹すべてを採取し,樹種,樹齢,年輪成長パターンを調査した。その結果,森林組成はトウヒ属が80%,モミ属とカラマツ属がそれぞれ10%を占めること,対象とした木材の年輪年代は一致し,十和田湖東方の同一火山灰に覆われた埋没林と同じ年に死滅したことが分かった。 2.長野県軽井沢町成沢の約13,000年前の浅間火山噴火による板鼻黄色軽石に覆われた森林・植生の構造解析のために南北10km範囲内の露頭調査を行い,樹種,樹齢を検討した。その結果,トウヒ属を主体とし,カラマツ属・マツ属を随伴するか,マツ属(ハイマツ)のみからなる森林構成が明らかになってきた。 3.青森県西津軽郡西海岸における約25,000年前の水位変動によって枯死埋積した森林・植生を構造解析するために,樹種,樹齢を検討した。大半はトウヒ属とカラマツ属(おそらくグイマツ)であった。また,枯死埋積の過程を復元するために産状記載と花粉化石群を検討し,急激な水位変動が原因であることを明らかにした。 以上のように,今年度においては,現地調査によって産状記載と試料採取を重点的に行い,森林の樹種構成と構造を明らかにした。次年度においては森林泥炭(埋没土壌を含む)の分析方法の検討と林床植生の復元を目指し,植生の空間構造復元の方法を確立する予定である。
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