Research Abstract |
愛知県知多半島の常滑層群豊丘累層および布土累層,岐阜県土岐市の瀬戸層群土岐砂礫層,岐阜県垂井町の奄芸層群について,地質調査および植物化石の採集,同定を行った。採集した化石の一部は,落射蛍光顕微鏡を用いて,通常光では観察できない気孔配列や葉脈系を検討した。その結果,常滑層群下部の豊丘累層よりFagus stuxbergii,Paliurus sp.,Ceratophyllumsp.などを,布土累層からFagus stuxbergii,Cunninghamia sp.,Keteleeria sp.,Zelkova ungeri,Liquidambar protopalmata,Trapella hispidataなどを検出・同定できた。布土累層から産出したLiquidambar protopalmataは,東北地方の上部中新統から報告されている。豊丘累層と布土累層から産出するFagus stuxbergiiは,上部中新統から多産する種である。また,岐阜県笠原町の土岐砂礫層から,pinus trifolia Keteleeria sp.,Fagus stuxbergii,Carya striataなどを検出・同定できた(塚腰・陶土団体研究グループ,投稿中)。Pinus trifoliaは,土岐砂礫層の下位の上部中新統土岐口陶土層からのみ産出が報告されていた種である。さらに,岐阜県垂井町の更新統奄芸層群から,Davidia involucrataの内果皮化石が,Metasequoia glyptostroboides,Juglans megacinereaなどと共産した。以上のことから,伊勢湾周辺における古植物相の変遷は,中新世後期植物群(土岐口陶土層の化石植物群),中新世末から鮮新世前期植物群(Pinus trifolia,Fagus stuxbergii,LIquidambar protopalmataなどの中新世後期植物群の要素を含む化石植物群,豊丘累層〜布土累層下部の化石植物群),鮮新後期-更新世植物群(メタセコイア植物群に対比される化石植物群,奄芸層群)に区分できる。
|