Research Abstract |
本年度行った研究は,大きく二つに分けられる. まず,CMコンドライトの層状珪酸塩鉱物の研究について述べる.本年度は,Murray,Y791198,Migheiの3種類の隕石について,顕微可視分光スペクトルの分析と,化学組成のEPMA分析を行った.地球に落下する以前に経験した水質変成の程度は,SEMを用いた観察によって,上記の順に高くなっている.しかし,昨年度の場合と比べると,変質の程度の違いはずっと小さい.昨年度の研究では,変質の程度の高いY82042の層状珪酸塩は,変質の程度の低いMurchisonと比べて,L^*a^*b^*表色系のa^*b^*平面において赤味の強いことを示すところに比較的集中してプロットされた.また,前者は後者より,かなりMgに富み,かつ組成は比較的そろっていた.しかし,本年度の研究においては,Murrayより変質の程度が高いMigheiのほうが,a^*b^*平面において緑味の強いことを示すところに集中してプロットされた.しかし,その化学組成は前者が後者よりもMgに富み,組成がそろっている.緑泥石が層状珪酸塩の主体となっているY791198では,a^*b^*平面において非常に黄味の強いことを示すところにプロットされた. 次に,蛇紋石族および緑泥石族鉱物の顕微可視分光スペクトルと,それらの化学組成についての研究について述べる.使用した鉱物はMg/(Mg+Fe)比の範囲が出来るだけ広くなるように選んだ.これらの鉱物の色に,特にFe^<3+>/Fe^<2+>比あるいは,Fe^<3+>やFe^<2+>の含有量が,もっとも効いているのではないかと予想した.Fe^<3+>/Fe^<2+>比の推定は,Albee and Chodos(1970)の方法を用いた.この結果,緑泥石族鉱物については,Fe^<3+>/Fe^<2+>比とa^*値の間に弱い負の相関が見られた.それに対して,蛇紋石族鉱物では,cronstedtiteの軸色が緑と赤の間で大きく変化してしまうため,きれいな関係は得られていない.
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