1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640604
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Research Institution | Toyama University |
Principal Investigator |
氏家 治 富山大学, 理学部, 教授 (10176662)
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Keywords | ストロンチウム同位体比 / ネオジム同位体比 / マグマ混合 / 普通輝石 / 同位体平衡 |
Research Abstract |
二年計画の二年目にあたる今年度は、毘沙門岳(標高1386m)の安山岩〜デイサイト類がマグマ混合で生じたことを全岩化学組成および斑晶鉱物の化学組成から確認し、全岩および分離した普通輝石斑晶の^<87>Sr/^<86>Srと^<143>Nd/^<144>Ndの同位体比を求めた。 全岩化学組成は、多くの成分が二成分変化図上で直線的トレンドを示し、ことにシリカに富む岩石ほどMg/Fe比が高い傾向にあることが注目に値する。このトレンドは単一マグマの分化では生じ得ないものであり、さらに仮にマグマ混合で形成サレタとすると、通例に反してその一方の端成分マグマはMg/Fe比が高いデイサイトということになる。この判断が正しいことが輝石の斑晶の化学組成の統計的処理によって確認された。すなわち、輝石斑晶はMg/Fe比に関して二峰性を示し、シリカに富む岩石中ほどMg/Fe比の高い輝石の割合が高いのである。故にシリカに富む液相とMgに富む輝石とからなるマグマが一方の端成分であり、もう一方は相対的にシリカに乏しい液相とMgに乏しい輝石とからなるマグマであると結論された。全岩と分離した普通輝石斑晶の^<87>Sr/^<86>Srと^<143>Nd/^<144>Ndの同位体比の差を普通輝石斑晶の平均mg#^l(=100Mg/(Mg+Fe))の関数としてみると、普通輝石がmg#=81.6〜84.2の間はどちらの同位体比とも誤差の範囲内で一致し、輝石斑晶が同位体的に平衡に達していたことが示された。ところがmg#ga84.8の普通輝石の同位対比では、^<87>Sr/^<86>Srで0.00020(全岩の同比は0.70723)、^<143>Nd/^<144>Ndで0.00031(全岩の同比は0.51250)という著しい差異が認められた。残念ながら同位体の拡散速度の定量化には到らなかったが、明かにシリカに富む端成分マグマに由来すると考えられる斑晶輝石でも同位体的には既に混合後のマグマと再平衡に達しているので、化学成分の拡散よりも同位体の平衡化の方が急速であろうとの研究開始前の予測が正しかったことの証明には成功したと言える。
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