1996 Fiscal Year Annual Research Report
モデル実験によるオリビン-スピネル相転移のカイネティックスの研究
Project/Area Number |
08640605
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下林 典正 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70235688)
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Keywords | オリビン-スピネル相転移 / Mg_2GeO_4 / 水熱法 / カイネティックス実験 |
Research Abstract |
オリビン-スピネル相転移のカイネティックスを検証する基礎データを収集するために,アナログ物質であるMg_2GeO_4を用いて水熱法によるモデル実験を行うのが本研究の趣旨である.初年度である本年度は主に実験環境の整備に時間を充てた.すなわち,痛みの激しかった既存の水熱合成装置に新タイプのテストチューブ型の高圧反応容器を設備備品として導入した.しかし,既存の反応容器との互換性が悪く,新容器を実験装置に取り付けるための付帯作業に予定外の時間と労力を要した.そのために,新しい反応容器を用いて実験はまだ始められず,本年度は従来の反応容器での追加実験と従来のデータの検討・吟味に主眼を置くこととなった. データの解析に用いるX線回折法の精度を向上させるために,回折X線強度のデジタル化を計った.これにより従来は回折X線のピーク高で読んでいた強度を積分データで取り扱うことができ,より信頼のおける相転移率を算出することができるようになった.こうして実験データを再検討した上で,精度が向上した相転移率を時間の関数として処理して,通常の核生成成長に準拠した反応速度論を適用してデータの解析を行った.その結果,共存するH_2O量の増加によって相転移の開始が大きく促進されることを確認した.すなわち,転移の開始までに要する時間をH_2O量に対してプロットすると,下に凸の関数形にしたがって単調に減少することがわかった.さらには,反応生成物を透過型電子顕微鏡で観察を行い,その粒内の組織から,水熱法により誘起された相転移は,通常の高圧実験により報ぜられているような核生成成長とはメカニズムが若干異なる可能性があることも示唆した.なお,これらのことは昨年の国際地質学会議(北京)で報告した.
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