1996 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生物のバイオミネラリゼーションと海底熱水活動における物質循環の特性化
Project/Area Number |
08640614
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 泉 東京理科大学, 理学部, 助教授 (90155648)
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Keywords | 海洋生物 / バイオミネラリゼーション / XAFS / 状態分析 / ハオリムシ / シロウリガイ / 硫黄 / 熱水噴出孔 |
Research Abstract |
本研究では、日本近海で発見された熱水噴出孔生物であるシロウリガイとハオリムシに着目し、両生物に含まれる硫黄の状態分析と、それらの生物の棲息環境である熱水噴出孔噴出物の研究により深海底における物質循環に寄与する硫黄の化学形を明らかにすることを目的とした。両生物は血管系が発達しヘモグロビンを有するにもかかわらず、ヘモグロビンと安定に結合し呼吸阻害を起こす硫化水素を利用する興味深い生物である。放射光を用いたS K-XANESスペクトルの解析によりシロウリガイの硫黄分は大部分が元素状硫黄であり、ハオリムシは元素状硫黄の他に4価〜6価の硫黄が存在することを明らかにした。硫黄の化学形は、IRスペクトルからは評価できなかったので、XANESを用いた本研究により初めて明らかにすることができた知見である。また、SEM-EDXや粉末X線回折による分析から熱水噴出口からの噴出物にはアモルファスシリカが多く存在し、ヘイアの噴出物にはSi,Mn,Ca,Fe,Cl,S等の元素が含まれ、結晶質物質としてはMgを含む方解石、クトナホラ石等が存在することが分かった。イゼナの噴出物にはSi,Ba,S,Fe,Zn,Cl,B等の元素が含まれ、結晶質物質として重晶石、アルファ硫黄等が見られた。シロウリガイ、ハオリムシの硫黄のスペクトルのEXAFSの解析を試みたが、測定試料が混合物であり海水中に棲息する生物であるので硫黄のスペクトル上に塩素のピークが1部重なるなど、色々と測定の妨害となる要素が重なったため、配位数や原子間距離の解析は困難であった。
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