1997 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生物のバイオミネラリゼーションと海底熱水活動における物質循環の特性化
Project/Area Number |
08640614
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Research Institution | Science University of Tokyo |
Principal Investigator |
中井 泉 東京理科大学, 理学部, 助教授 (90155648)
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Keywords | 海洋生物 / バイオミネラリゼーション / XAFS / 状態分析 / ハオリムシ / シロウリガイ |
Research Abstract |
平成8年度の研究で、シロウリガイ、ハオリムシに含まれる硫黄の化学形を特定できたが、高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設の運転が停止していたため、平成8年12月より平成10年11月まで硫黄の放射光状態分析ができなかった。そこで、本年度は新しい方法論の開拓と、新たな2つの生物種のバイオミネラリゼーションに研究を発展させ成果を得た。方法論としては、本年度本学に設置された固体NMRの手法の修得応用である。昨年末に装置が設置され、現在ケイ素とリンのNMRがとれるようになった。プローブの破損というトラブルにより、実試料への応用にはいたっていないが、4月から生体鉱物中のケイ素とリンの状態分析を行う計画である。新たな系として、高知県室戸岬で採集したヒザラガイ、ウスヒザラガイと兵庫県淡路島で採集したババカセを試料として、XAFSの測定を行った。これらの生物の歯舌は主に磁鉄鉱からなり、その他に、非晶質のferritin様鉄化合物の存在が我々の研究から明らかになっている。本研究により初めてババカセのXANESスペクトルを測定解析した結果、磁鉄鉱の形成は確認されるものの、ヒザラガイの歯舌に比べて磁鉄鉱の存在量が低いことが明らかになった。同じヒザラ貝類にあっても種によって磁鉄鉱形成には明瞭な差が認められることを示している。一方、放射光蛍光X線イメージングによる各地のウナギの耳石のSrの2次元分析により、海洋で生息していた時期を年輪構造から推定した。Srは海水の方が淡水より百倍以上高濃度であることから、高濃度のSr領域が海洋での生息期間を示す。本研究の結果、魚野川、エルベ川のウナギは海で産まれた後、淡水で生活する通常の回遊パターンを示したが、五島、北海のウナギは成魚になったあと海で生息するというsea locking(海封)という特異な回遊生態を持っていることを初めて見いだした。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] C.Numako: "XAFS Studies of Iron in the Teeth of Chiton,Acanthopleura Japonica" J.Phys.TV FRANCE. C2. 615-616 (1997)
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[Publications] R.Miyawaki: "Crystal Structure of Rare Earth Minerals" 希土類 RARE EARTHS. 31. 1-14 (1997)
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[Publications] I.Nakai: "Chemical Speciation of Geological Samples by micro-XANES Techniques" J.Trace Microprobe Techniques. 16・1. 87-98 (1998)
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[Publications] 太田 典明: "放射光全反射蛍光X線分析による生体試料中の微量アルミニウムの定量法の開発" X線分析の進歩. 28. 207-216 (1997)
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[Publications] 沼子 千弥: "蛍光XAFS法による生体鉱物の非破壊状態分析" X線分析の進歩. 27. 221-234 (1996)
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[Publications] S.Homma: "Direct detection of mercury-bound metalloproteins using a combination of gel electrophoresis and one dimensional SR-XRFanalysis" Anal.Lett.29・4. 601-611 (1996)
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[Publications] 中井 泉(分担): "新版「地学事典」" 平凡社, 1443 (1996)
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[Publications] 中井 泉(分担): "機器分析ガイドブック" 丸善(株), 1093 (1996)