1996 Fiscal Year Annual Research Report
泥炭の同位体に記録された過去1万年の地球環境の変遷
Project/Area Number |
08640618
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
赤木 右 東京農工大学, 農学部, 助教授 (80184076)
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Keywords | 尾瀬ヶ原 / 泥炭 / 炭素同位体 / 地球環境の変遷 / リグニン / 成長速度 |
Research Abstract |
泥炭の炭素の同位体比の変動から過去の環境変動を解析するために、尾瀬総合学術調査に参加し、尾瀬ケ原の下田代において5mの泥炭層の柱状試料を採取した。先ず、泥炭試料のC-14年代測定を行い、時間軸を設定した。その結果、過去8000年程度まで遡ることが可能であった。この泥炭層を2〜3cm置きに分けて試料の写真を撮影した後、特別の真空ラインを用いて泥炭中の炭素を二酸化炭素として取り出し、その同位体比を測定した。炭素の同位体は年代を遡るにつれ、低い同位体比を示していることが分かった。この同位体比変化を解釈するために、次に泥炭からリグニン成分とセルロース成分とを抽出し、その同位体比を測定した。リグニンはセルロースよりも低い同位体比を示した。リグニンはセルロースよりも分解しにくく、リグニンが占める割合は年代を遡るにつれて次第に大きく、逆にセルロースの占める割合は小さくなった。リグニンの炭素同位体は3000年から4000年の間で有意に高いことが明かになった。異なる同位体比を持つリグニンとセルロースの混合割合の変化によって、泥炭の炭素の同位体比の変化を説明することが可能であった。さらに、最も保存性の高いリグニンの同位体比の変化をもたらした原因について考察した。1)大気の二酸化炭素の同位体が変化している可能性、2)植生が変化し、光合成を行う植物が変化した可能性、3)光合成反応の代謝に環境が変化をもたらした可能性のそれぞれについて検討し、何らかの原因で植物の成長速度が変化し、代謝に影響し同位体比が大きくなった可能性が最も大きいことを指摘した。成長速度が大きかったことが高層湿原の成因に関係している可能性がある。
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[Publications] 赤木右: "地球規模で見たCO_2循環" APAST. 21. 9-13 (1996)
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[Publications] 未村祥央 他: "尾瀬ヶ原におけるメタンフラックスの測定とその変動要因" 農業環境技術研究所資源生態管理科研究集録. 12. 99-112 (1996)
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[Publications] 赤木右: "無機質量分析計" 機器分析ガイドブック 丸善. 194-201 (1996)
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[Publications] T.Akagi 他: "Carbon Isotope of fluid inclusions in 2airean fibrous diamonds" J.Conf.Abs.1. 6- (1996)
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[Publications] T.Akagi 他: "Constraint on the geochemical stage causing tetrad effect in kimuraite" Geochem.J.30. 139-148 (1996)