1996 Fiscal Year Annual Research Report
日本海深海堆積物コア中に発見された有機態炭素濃縮層の年代決定と生物生産の変遷
Project/Area Number |
08640625
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
加藤 義久 東海大学, 海洋学部, 助教授 (00152752)
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Keywords | 日本海 / 堆積物 / 海底境界層 / 炭素循環 / 続成作用 / 物質フラックス / 炭素14年代 / 古海洋 |
Research Abstract |
本研究の目的は,日本海深海堆積物を対象として,海底境界層を横切る物質フラックスの算定,および気候変動に応答した過去の日本海の化学海洋学的環境変動を解析することにある. (1)試料と方法:大和海盆および日本海盆における合計10点から採取したピストンコアを研究試料とした.その内,7つのコアを用いて,間隙水中の全炭酸など5成分の鉛直分布を明らかにした.また,6つのコアを用いて,堆積物中の有機態炭素,金属元素(鉄など8元素)および天然放射性核種(トリウム-230など4核種)の各鉛直分布を明らかにすると共に,有機態炭素を対象として,合計31層準の炭素-14年代を決定した. (2)堆積物の変質に起因した海底境界層を横切る物質フラックスの算定:間隙水中の全炭素,硫酸塩および溶存マンガンの南北断面分布を明らかにした.そして,海底境界層における炭素循環を検討したところ,海底への炭素の供給フラックスは80mmol m-2yr-1であるが,そのまま埋没する堆積フラックスと堆積物中で無機化して海水中へ回帰する拡散フラックスはほぼ等しく,それぞれ供給フラックスの約1/2であることが明らかになった.この成果は論文として公表した. (3)気候変動に応答した過去の日本海の化学海洋学的環境変動:日本海では10-11kaの時代に有機態炭素含有量が極めて大きかったことが判明した.大場等の時代区分では,2-1万年前は親潮流入と鉛直混合再開が起こり,1-0.8万年前は対馬暖流の一時的流入と還元的から酸化的への過渡期であるとされている.すなわち,11kaにおける有機態炭素のピークの存在は,大場等の説明する環境変遷期に相当し,表層の生物生産量が極めて大きく,しかも高い生産力を持った海水が日本海のほぼ全域に拡がっていたと考えられる.この成果は1997粘土日本海洋学会春季大会で発表する予定である.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Kato and T.Masuzawa: "Benthic recycling of biogenic debris and pore water CO_2 flux in the Japan Sea." Biogeochemical Processes in the North Pacific. Proceedings of the International Marine Science Symposium on Biogeochemical Processes in the North Pacific.Ed.by S.Tsunogai 12-14 November 1996,Plaza Hotel Mutsu.Mutsu.Aomori.Japan.344-359 (1977)
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[Publications] H.Minami and Y.Kato: "The behavior of arsenic in pore waters from the western North Pacific sediment." Biogeochemical Processes in the North Pacific. Proceedings of the International Marine Science Symposium on Biogeochemical Processes in the North Pacific.Ed.by S.Tsunogai 12-14 November 1996,Plaza Hotel Mutsu.Mutsu.Aomori.Japan.338-343 (1977)