1996 Fiscal Year Annual Research Report
トリグリセライドの特異な多孔質結晶の発生機構に関する構造化学的研究
Project/Area Number |
08640649
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金子 文俊 大阪大学, 大学院・理学研究所, 講師 (70214468)
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Keywords | トリグリセリド / 多孔質 / トリパルミチン / 結晶成長 / 顕微赤外分光 |
Research Abstract |
1.極低温から高温域まで連続的に温度を変えて顕微赤外分光器による偏光測定を可能にするためOxford社製のクライオスタットを購入して改造した。窓板を赤外領域で透明に材料に変え、クライオスタットを三次元的に位置微調整できるステージを製作した。また顕微赤外分光器おいてもカセグレインの高さの調節機能が必要であることが分かり改造を施した。 2.トリパルミチンの多孔質結晶が発生する条件と多孔質結晶の成長する過程を顕微鏡観察により調べた。多孔質結晶は51-55℃の範囲内でその発生が見られた。多孔質結晶が発生する場合もその初期過程では通常の結晶成長と同じく微結晶が徐々に成長している。ところが途中からごく一部の結晶が突如として多孔質結晶として成長を開始する。この時結晶の一部に小さな突起が発生し、その部分が他の部分より著しく成長が速くなっている。この部分の表面は成長の遅い部分と較べて荒れている。また顕微赤外法を用いてこの多孔質部分を測定したところX線回折の実験結果の同じくβ相であった。 3.トリグリセリドのα相はラメラ面に対して分子鎖が垂直に配向しヘキサゴナルの福格子を形成すると考えられている。トリパルミチンではα相は融液を窓板に挟んで成長させた場合、球晶状に成長する。この成長方向とそれと直交する方向の偏光を用いた測定ではCH2挟み、CH2横揺れ、CH2縦揺れ等のバンドにおいて明確な二色性が観測された。CH2挟み、CH2横揺れ等の分子鎖に垂直方向の遷移モーメントをもつバンドは成長方向の偏光で強く観測され、CH2縦揺れとCH3対称変角は垂直方向の偏光で強い吸収を示す。これは分子が全体として垂直方向へ傾斜していることを意味している。
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