1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640662
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坂口 喜生 理化学研究所, 分子光化学研究室, 副主任研究員 (30167423)
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Keywords | トリアリール燐 / 磁場効果 / Δg機構 / 三重項機構 / 重原子効果 / 粘度依存性 / 置換基効果 |
Research Abstract |
補助金により、グローブボックスその他からなる無酸素環境での試料溶液調製システムを製作し、試料を劣化させずに実験を行える環境を作った。 無置換のトリフェニル燐を用い、超伝導磁石によって10テスラまでの磁場依存性を測定したところ、散逸ラジカルの収量は、2-プロパノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン溶液中で2〜4テスラで減少が止まり、一定値となった。この反応で生じるラジカル対は一方に燐という重原子を含み、Δg機構の発現が期待されるが、この機構では現象を説明できないことが明らかとなった。 次に、燐以外の重原子を対称に置換した、トリ(4-クロロフェニル)燐について低磁場領域で実験を行った。その結果、この化合物は無置換体より大きな磁場効果を示すことが分かった。一般に重原子の導入は磁場効果を減少させるが、燐化合物においては逆に大きくなり、この点でも燐化合物の磁場効果は特異である。この反応系において、溶媒粘度と磁場効果の関係を調べる目的でn-ヘキサンからヘキサデカンにわたるアルカン溶媒で実験を行ったところ、粘度の増大とともに、磁場効果が大きくなることが分かった。また、効果が発現する磁場強度は粘度とともに少しづつ小さくなることも明らかになった。特に、ヘキサデカン溶液中では1.5テスラの磁場下において、0磁場の時の40%にまで収量が減少することが明らかとなり、Δg機構で予想される磁場効果の最大値、67%減少を上回ることが明らかとなった。 逆にオルト位をメチル置換した、トリ(2-メチルフェニル)燐では磁場効果が減少し、さらに置換を進めた、トリ(2,4,6-トリメチルフェニル)燐ではほとんど磁場効果が観測されなかった。これは分子の平面性が何らかの形で、磁場効果の大きさに関わっていることを意味するようであるが、これについては今後の検討を要する。
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