1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640662
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN) |
Principal Investigator |
坂口 喜生 理化学研究所, 分子光化学研究室, 副主任研究員 (30167423)
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Keywords | トリアリール燐 / 磁場効果 / 重原子効果 / 粘度依存性 / 三重項機構 / 分子性三重項機構 |
Research Abstract |
昨年度測定した化合物に加え、(4-ブロモフェニル)ジフェニル燐についても測定を行い、トリ(4-クロロフェニル)燐よりは小さいがトリフェニル燐より大きな磁場効果を見いだした。この結果、ハロゲンによる置換基効果は電子吸引性ではなく、重原子効果によるものであることが確認された。また、極性溶媒の効果をトリフェニル燐とトリ(4-クロロフェニル)燐で比較したところかなり差が見られた。両者の反応とも三重項増感剤によっても開始でき、反応が励起三重項状態から始まることも確認された。 この大きな磁場効果をラジカル対機構の下で説明できる唯一の機構である、三重項機構に基づいて磁場依存性を解析したところ、磁場依存性は良く説明できるものの、理論から導かれる粘度依存性が実験結果よりずっと大きく、実験を再現できないことが明らかになった。 そこで、ラジカル対機構による説明を捨て、ラジカル対の前駆対である励起三重項分子の磁場効果を検討した。三重項増感剤の有無によって磁場依存性が変化しないので、励起一重項状態からの項間交差過程に対する磁場効果でないことはすぐ結論できる。励起三重項状態の反応または失活過程に対する磁場効果の機構は、ラジカル対コンプレックスに関する三重項機構と同様に記述できる。この場合、溶媒粘度に依存するラジカル対コンプレックスの散逸速度が、反応による分子の分解速度に置き換えられ、粘度によらなくなる。この分子性三重項機構に基づき、失活過程に磁場効果があると仮定するシュミレーションは実験結果と良い一致を示した。 このほか、極性溶媒の効果も磁場効果の原因が励起三重項分子にあると仮定すると説明でき、燐化合物の大きな磁場効果は、これまで知られていなかった、励起三重項状態分子の失活仮定の磁場依存性に由来することが明かとなった。
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