1996 Fiscal Year Annual Research Report
結晶状態での光誘起電子移動を利用した酸化還元型ホトクロミズム系の構築
Project/Area Number |
08640664
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 孝紀 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70202132)
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Keywords | 酸化還元系 / 動的酸化還元 / 有機結晶 / 光誘起電子移動 / 機能性色素 / エレクトロクロミズム / ホトクロミズム / 固相反応 |
Research Abstract |
本研究は、電子供与体と受容体の二成分からなる電荷移動錯体をモチーフとして、酸化還元型の新しいホトクロミズム系を提案しそれを実現することを目的としている。このような系を実現する為には、(1)電子移動後のイオン状態で強力な発色団が形成される酸化還元系分子を設計すること、(2)光誘起電子移動を結晶状態で行なうことで反応パスを制限すること(3)イオン状態から容易に中性状態に戻らないような特別な工夫を施すこと、の三点を検討することが必要である。平成8年度には、これらのうち(1)及び(3)に重点を置いた分子レベルでの研究を行なった。安定に単離された9,9,10,10-テトラアリールジヒドロフェナントレンはヘキサアリールエタン型の構造を有し、酸化により2つのトリアリールメタン骨格を結ぶ結合の切断が起きた。この際生成するジカチオンはマラカイトグリーンなどの強力な色素骨格を有するものであり600nm付近にモル級光係数が10万程の大きな吸収極大を示す。X線構造解析によれば、このジカチオンではビフェニル骨格は69度もの大きな角度をなして捻れており、酸化する前のジヒドロフェナントレンが、ほぼ平面構造であるのとは対照的である。このような構造変化は、イオン状態が中性状態に戻ってしまう過程のバリアとなるものであり、上記の系が(1)及び(3)の要請を満たすプロトタイプとなることを示している。また、非対称にアリール基を導入した系の研究からは、エタン結合の切断がカチオンラジカル状態で起きることが示唆されている。この結果は二成分系での光反応の設計を行なう際の基礎となるものである。
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[Publications] T. Kurihara: "Electronic Structures and Oxidation Potentials of some Azulene Deriratives" Bull. Chem. Soc. Jpn.69・7. 2003-2008 (1996)
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[Publications] T. Suzuki: "Tetracyanoquinodime thanes fused with a 〔1,2,5〕Chalcogena diazole Ring" Mol. Cryst. Liq. Cryst.(印刷中). (1997)
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[Publications] T.Suzuki: "Hoxaphenylethane Derivatives Exhibiting Novel Electrochromic Behavior" Angew. Chem.(印刷中). (1997)