1996 Fiscal Year Annual Research Report
非対称ジエンのディールス・アルダー反応のπ面選択性の電子制御
Project/Area Number |
08640680
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
石田 勝 岐阜大学, 工学部, 助教授 (30135181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 有二 岐阜大学, 工学部, 助手 (10192684)
稲垣 都士 岐阜大学, 工学部, 教授 (10108061)
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Keywords | 5-ホルミルシクロペンタジエン / π面選択性 / Diels・Alder反応 / 静電場による軌道混合 / 軌道混合 / 5-ヒドロキシイミノシクロペンタジエン |
Research Abstract |
本研究では,5-ホルミルシクロペンタジエンのDiels-Alder反応におけるanti面選択性が静電場による軌道混合で変形したFMOに起因することを明らかとした. 静電場による軌道混合では,正電荷の場合,エネルギーの高い軌道は電荷に近い原子上で低い軌道を逆位相で取り込む.また負電荷の場合は,これとは逆に高い軌道は同位相で取り込む. Ab initio分子軌道法(3-21G)により5-ホルミルシクロペンタジエンの構造を最適化したところ,ホルミル基は正の電荷を有し,FMOは,正電荷による軌道混合に一致してanti面での反応に有利になるように変形していることが明らかとなった.上記の仮説が正しいとすれば,カルバモイル基はホルミル基よりも正電荷が小さく正電荷の効果が減少すると考えられるが,事実FMOは選択性を示さず実験でもsyn面選択性の増加が確認されている.またホルミル基のカルボニル酸素を電気陰性度の低い窒素に変えて正電荷を弱めれば,軌道の重なりの効果によりanti面選択性の減少が期待できる.実際にヒドロキシイミノ誘導体を合成し,N-フェニルマレイミドとの反応を行ったところsyn体とanti体が50:50の比で得られ予測と一致した.なおカルボキシ基も正電荷であるが,syn面選択性を示すのは,静電場よりもむしろ軌道の重なりによる軌道混合が主となっているからだと考えられる.シアノ基に関しては負電荷をもち,静電場からも軌道の重なりからもsyn面選択性で実際syn付加体のみが得られている.なお,本研究の一部は討論会で口頭発表した(石田,小林,清水,稲垣,第13回基礎有機化学連合討論会,1996年11月,名古屋).
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