Research Abstract |
先に我々は,傘の表も裏も美しいピンク色をした食用キノコ,トキイロヒラタケの新しいタイプの光合成機能性色素[3H-インドール-3-オン(1)(通称,インドロン)-タンパク質]の三次構造の解明の一助として,インドロン/α-シクロデキストリン(α-CyD)包接体を構築し,2,3の興味ある知見を得ている。そこで,今回我々は,インドロン1の化学合成を目的とした研究の展開中に,まず構造の類似したイサチン(2)が,どのようにα-CyDに確認され,水溶性イサチン/α-CyD包接体を構築するかに興味をもち検討したところ,インドロン/α-CyD包接体と同様,安定な水溶性包接体が効果的に得られた。得られた包接体の構造は,元素分析,比旋光度,電子スペクトル,CD,IR,1H-および13C-NMRスペクトルを測定し,それらの解析結果から確認した。なお,電子スペクトルデータの解析結果は,インドロン/α-CyD包接体の方がイサチン/α-CyD包接体よりもより強い電荷移動相互作用があることを示唆した。 次に,先に我々は,発茸三日目のトキイロヒラタケの細胞内物質として新規有機三リン酸塩のMagnesium 1-Benzoyloxy-2-mercaptopropane-3-triphosphate(A)を見い出している。そこで,今回我々は,このAが本キノコの菌糸生育から子実体形成および成長にかけて,何らかの生物活性をもつのではないかと考え,このAの化学合成を目的とした研究の展開中に,まず構造の類似した水溶性の1-Benzoylglycerol (3)を合成し(収率36.4%),さらに本キノコに対する生物活性についても鋭意検討したところ,すこぶる発茸および成長を促進させる効果があることを見い出した。なお,この化合物3は新規であり,また,この生体分子メカニズムについては現在鋭意検討中である。
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