1997 Fiscal Year Annual Research Report
高分子マトリックス中で見られる物質の凝集・結晶化機構の解明
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08640742
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐々木 茂男 九州大学, 理学部, 助手 (30225867)
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Keywords | 高分子マトリックス / ゲル / 疎水性対イオン吸着 / 体積相転移 / 結晶成長 / KNO_3 / CaCO_3 |
Research Abstract |
本年度の研究によって、1)アクリルアミドゲル中でのKNO_3の結晶成長がOstwald熟成であることを再確認すると同時に、結晶粒子の一部が溶解し、それと反対方向の一部が成長することによって、結晶がゲルを見かけ上移動することを見出し、2)Na_2CO_3を含浸させたゲルとCaCl_2を含浸させたゲルをセルロース膜を挟んで接触させることによってCaCO_3の結晶を析出させると、Na_2CO_3、CaCl_2濃度にほぼ比例したサイズの結晶が得られること、3)疎水性の異なるアクリル酸-アルキルアクリレイトゲルへの疎水性対イオン-ドデシルピリジニウムイオンの吸着の協同性は、ゲル鎖の疎水性が高いほど反協同的となること、4)n-イソプコピルアクリルアミドゲルの転移的体積変化・体積相転移は、ゲル鎖に荷電を導入すると、転移は消滅するとなどを明らかにすることができた。 特筆されることは、1)の研究において、ゲル内を移動する結晶粒子が、ゲル外へ突き出ることを見出したとである。この事実によって、ゲルマトリックスを排除しながら、結晶は成長していることが明らかにできたと、3)の研究によって、疎水性対イオンのイオン性ゲルへの協同吸着の駆動力となっている、吸着した疎水性対イオン間の疎水相互作用は、ゲル鎖の疎水性によって遮蔽されることが明らかにできたこと、4)の研究において、荷電基の存在が、ゲルの体積相転移を誘起するのに必須であるとの学説を否定したこと、などである。4)の研究成果は、水分子のゲル鎖への脱吸着によって駆動されている、ゲルの体積相転移現象を明らかにした昨年度の研究を発展させることによって得られたものである。3)の研究の延長として、Caイオンのイオン性ゲルへの吸着が、ゲル鎖の疎水性を高めることによって促進されることも明らかにされた。 本科研費によって、購入された顕微鏡によって、ゲルの体積変化挙動を正確に測定できるようになり、イン性ゲルが疎水性対イオンの吸着によって体積相転移を起こすことが明らかにされた。(論文準備中)
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Research Products
(9 results)
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[Publications] S.Sasaki: "Volume phase transition behavior of NIPA gels as a function of the chemical potential of water molecule" Maocromolecules. 30. 1847-1848 (1997)
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[Publications] H.Kawasaki: "Effect of pH on the volume phase transition of copolymer gels of N-isopropyl-acrylamide and sodium acrylate" J.Phys.Chem.101B. 4184-4187 (1997)
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[Publications] S.Sasaki: "Effect of the Donnan osmotic pressure on the volume phase transition of hydrated gels" J.Chem.Phys.107. 1028-1029 (1997)
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[Publications] H.Kawasaki: "Effect of Introduced Electric Charge on the Volume Phase Transition of N-Isopropylacrylamide Gels" J.Phys.Chem.101B. 5089-5093 (1997)
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[Publications] H.Kawasaki: "Effects of the gel size on the thermal behavior of N-isopropylacrylamide gels in relation to the volume phase transition" Chemistry Letters. 723-724 (1997)
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[Publications] S.Sasaki: "Effect of the hydrophobicity of chain on binding behavior of hydrophobic counterions to ionic gels" Langmuir. 13. 6135-6138 (1997)
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[Publications] S.Sasaki: "Effect of the hydrophobicity of chain on Ca2+ binding to ionic gels" Langmuir. (in press). (1998)
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[Publications] H.Kawasaki: "Effects of the gel size on the volume phase transition of poly(N-isopropylacrylamide)gels:A calorimetric study" Langmuir. (in press). (1998)
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[Publications] 前田 悠: "高分子ゲルの構造と物性" ゲルテクノロジー(サイエンスフォーラム社). 46・9. 191-203 (1997)