1996 Fiscal Year Annual Research Report
光化学反応を利用するフローインジェクション分析の基礎と応用に関する研究
Project/Area Number |
08640767
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小熊 幸一 千葉大学, 工学部, 教授 (60009529)
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Keywords | 光化学反応 / フローインジェクション分析 / セリウム / スペシエーション / 蛍光検出 |
Research Abstract |
セリウムはIII価とIV価の二つの酸化状態をとる。セリウム(III)は254nmの光で励起すると350nmに極大波長を有する蛍光を発するが、セリウム(IV)は蛍光性を示さない。また、γ線などの放射線によるセリウム(IV)の還元は化学線量計に利用されている。本研究ではセリウム(IV)が紫外線により還元されることを発見し、この還元反応をフローインジェクション分析に導入することによりセリウム(III)とセリウム(IV)の逐次定量法を確立した。 測定操作は次のとおりである。III価とIV価のセリウムを含む0.4M硫酸溶液をキャリヤ-である0.4M硫酸溶液(流速1m1/min)に注入し、先ず紫外線を照射することなく蛍光検出器に導きIII価セリウムのみを測定する。ついで、同じ試料溶液を再度注入し、紫外線を照射してから蛍光検出して全セリウムを測定する。全セリウムからIII価セリウムを差し引いてIV価セリウムを求める。 紫外線照射には市販の殺菌用ランプ(6W)に2mのポリエチレンチューブを巻き付けたものを使用し、10ppm程度のセリウム(IV)を定量的に還元することができた。検量線の直線域は検出器の感度調節によって変えることができ、たとえば0.15-1.5μg/m1及び1.3-10μg/m1でよい直線性が見られた(r=0.9998以上)。3回測定の相対標準偏差は1%以下であり、1時間あたり約15回の測定が可能であった。IV価セリウム液体は安定であると従来いわれているが、ppmまたはsubppm濃度になると30%近いがIII価に還元されていることがわかった。この原因の解明はセリウムのスペシエーションの問題であり、興味深いものがある。 本研究の今後の課題としては、光照射により誘起される酸化反応を探索し、それをフローインジェクションシステムに導入して選択的な分析法を開発することを予定している。
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