1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640794
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 欣也 北海道大学, 水産学部:助教授 (30222186)
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Keywords | 生活史 / 通し回遊 / 浸透圧調節 / 淡水 / 海水 / 適応度 |
Research Abstract |
水界を利用する生物は、水界と体液の浸透圧(塩分濃度の差)により生理的影響を受ける。川から海、あるいは海から川に移動する魚類では、異なる水界への移動に伴い、浸透圧調節に多くの生理的変化とエネルギーを費やす。生理的に海水に適応していない、ホッキョクシワナの仔魚は、海水に近い塩分濃度の水では、浸透圧調節が十分に出来ず、急激に生存率が低下する。浸透圧調節には、生化学的エネルギーが必要でり、一般に、海水中では淡水中よりも、浸透圧調節に多くのエネルギーが必要となる。 浸透圧調節は、外界から体内に進入した水と接する。鰓や腸での体内外の水とイオンの交換によって行われる。数学的単純化のために、浸透圧調節のエネルギーコストは、水・イオン交換面の面積に比例するものと考えることが出来る。イオン交換効率や、交換面積が小さければ、浸透圧調節の失敗による死亡率が高まる。そのため浸透圧調節の不備による死亡過程を、生存率の変化率が体の体積の2/3乗と、浸透圧に向けられるエネルギー量に比例すると仮定することが出来る。浸透調節にエネルギーが配分されると、成長に分配させるエネルギーが減ることになる。 上記のように、浸透圧調節に要するエネルギーは、海水中(海)で、淡水(河川・湖沼)より多くかかる。一方、死亡要因である捕食圧は、一般に海での方が大きく、体が小さいほど強い捕食圧を受ける。これらの関係を考慮して、海で過ごす場合と、河川・湖沼で過ごす場合について、成長・生存過程を表す微分方程式を作成した。生息場所の選択と、エネルギー配分を時間の関数とし、ある一定の期間(卵から成熟時点まで)に、生息場所とエネルギー配分をどのように選ぶと、適応度が最大になるかをポントリャ-ギンの最大化原理に基づいて計算した。 その結果、遡河回遊魚の生活史と、浸透圧調節へのエネルギー配分スケジュールを定性的に説明することが出来た。海での捕食圧と浸透圧調節効率により、通し回遊魚の生活史が大きく左右されることが分かった。
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