1997 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における性表現の進化:性差と性転換の関わりについて
Project/Area Number |
08640813
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
桑村 哲生 中京大学, 教養部, 教授 (00139974)
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Keywords | 性差 / 性転換 / 無駄産卵 / 性淘汰 / 性配分 / 配偶者選択 / 雄間競争 / 繁殖戦略 |
Research Abstract |
沖縄県瀬底島のサンゴ礁に生息するカザリキュウセン(ベラ科魚類)の配偶者選択ならびに性転換に関する実験・調査を継続した。昨年度の調査では、地味な体色のIP雌が派手なTP雄に性転換する途中で同時成熟になる可能性が示唆されたが、野外におけるTP雄除法実験および水槽における複数雄飼育実験を繰り返して慎重に検討した結果、この仮説は否定された。一方、これらの実験により、雄がいなくなると、最大雌が雄役をして他の雌たちと産卵上昇をおこない、放卵させることが確認された。これらは未受精卵であり、最大雌が放精していないことは明らかである。雌は放精の有無を認知できないらしく、最大雌が性転換を完了するまで、約3週間もの間、無駄な産卵を繰り返した。この間、最大雌は次第に体色を変化させていった。 一方、小型のIP雄の繁殖行動についても野外観察を行った。IP雄はTP雄のなわばり内に潜んでいたが、ふだんはTP雄にきびしく監視・攻撃され、めったにストリーキング(TP雄と雌のペア産卵時に飛び込んで放精)もしなかった。TP雄を一時的に除去すると、IP雄は活発にパトロールと求愛行動を行い、次々に雌とペア産卵した。しかし、再びTP雄を戻すと雌はIP雄を無視した。すなわち、雌は派手なTP体色を好むがTP雄が不在の場合は、IP雄であってもその求愛行動に反応して産卵することが明らかになった。このことは、上記の最大雌の雄役としての行動が、他の雌たちを将来の自らの配偶者として引き留めておく効果をもつことを示唆している。 これらの成果の一部は、25th International Ethological Conference(Aug.1997,Abstract399)および日本動物行動学会第16回大会(1997年11月,講演要旨集p.51-52)において発表した。
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