1998 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における性表現の進化:性差と性転換の関わりについて
Project/Area Number |
08640813
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Research Institution | CHUKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
桑村 哲生 中京大学, 教養部, 教授 (00139974)
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Keywords | 性差 / 性転換 / レズ産卵 / 性淘汰 / 性配分 / 配偶者選択 / 雄間競争 / 繁殖戦略 |
Research Abstract |
沖縄県瀬底島のサンゴ礁に生息するカザリキュウセン(ベラ科魚類)の配偶者選択ならびに性転換に関する実験・調査を継続した。昨年度に続き、水槽における複数雌飼育実験と野外におけるTP雄除去実験を繰り返した結果、雄がいなくなると、最大雌が雄役をして他の雌たちと産卵上昇をおこない、放卵させることが確認された。また、その直後にTP雄を戻すと、最大雌はすぐに雌の行動に戻って、TP雄と産卵することが観察された。一夫多妻のハレム社会をもつホンソメワケベラも同様の雄除去実験を実施したところ、同様に1位雌と下位雌との産卵行動(レズ産卵)が観察された。これらの実験から以下のことが明らかになった。 (1)最大雌は産卵直前の卵をもっていても、雄としての性行動を完璧にこなすことができる。また、本物の雄がくると、またすぐに雌の行動に戻るという可塑性をもつ。 (2)下位雌は最大個体を配偶者として選ぶ傾向がある。したがって、雄がいなくなると残された個体の中で一番大きい雌のほうへ積極的に寄って行く。 (3)最大雌がすみやかに雄役としての繁殖行動を開始するのは、性転換が完了するまで他の雌たちを引き留めておくためである。 すなわち、性差の進化をもたらす配偶者選択は、性転換のプロセスにおいても重要な働きをしていることが明らかになった。 これらの成果の一部は、7th International Behavioral Ecology Congress(Asilomar、July 1998、Abstract240)、日本魚類学会年会(1998年9月,講演要旨集p.39)および日本動物行動学会第17回大会(1998年11月,講演要旨集p.36,46)において発表した。
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Research Products
(1 results)