1997 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギの飲水中枢の同定と腸管よりの飲水調節物質の単離・精製
Project/Area Number |
08640864
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
安藤 正昭 広島大学, 総合科学部, 教授 (10100976)
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Keywords | 飲水調節 / 水吸収 / 脳 / 飲水中枢 / 延髄背側部 / 血液嚢 / ウナギ |
Research Abstract |
海水ウナギは海水を飲み、それを腸から吸収することによって血液の恒常性を維持している。しかし高濃度のNaClが腸に入ったのでは逆に腸から水が奪われ、脱水が進行する。海水ウナギの腸管内を等張マニトール液で灌流すると、一定速度で飲水するが、等張NaCl液を灌流すると飲水は抑えられる。この時飲水を抑えているのはCl^-で、Na^+は飲水を促進した。腸にNa^+ないしCl^-が到達して、飲水行動が変化するまで20分以上を要するので、何らかのホルモン様物質が腸管より出ていると判断し、それを確かめるための実験系を確立した。後主静脈にカニューレを装着し、種々の物質を静脈に注入した。するとアンギオテンシンII(ANGII)、ヒスタミン(HA)、セロトニン(5-HT)、カルバコール、イソプロテレノール、プロラクチン、P物質によって飲水は促進され、心房性ナトリウム利尿ペプチド、バソトシン、ソマトスタキン、フェニレフリン、バソアクティブ腸管ペプチド、コレシストキニン、ペプチドYY、ウナギ腸管ペンタペプチド(EIPP)によっては抑えられた。これらの物質は血液中から効いているので、飲水中枢は血液・脳関門がルーズになっている場所だと判断し、エバンスブルーを血中に投与し、染色される脳部位を探した。延髄背側部、小脳腹側部、血液嚢の基部にあるニューロンがエバンスブルーで染まっていた。HAと5-HTの効果はANGIIを介することも見つけているので、蛍光標識したANGIIを脳切片に作用させると、延髄背側部と血液嚢の基部に、強く特異的に結合した。以上の結果から延髄背側部と血液嚢の基部にあるニューロンが飲水中枢の一部であると考えられる。今後はこれらのニューロンに微小電極を刺入し、上記の飲水調節因子を作用させたときの反応を調べ、飲水行動と結びつく反応を示すニューロンを同定する予定である。また以前に我々の研究室でウナギの腸管より単離したEIPPは飲水を抑えたが、腸管内をCl^-で灌流してもEIPPのピークをクロマトグラムの上で検出することはできなかった。
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[Publications] Ando, M & Nagashima K.: "Intestinal Na^+ and Cl^- levels control drinking behavior in the seawater adapted eel anguilla japonica" J.Exp.Biol.199. 711-716 (1996)
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[Publications] Uesaka T.et al.: "Effecto of eel neuropeptide Y on ion transport across the seawater eel intestine" Zool.Sci.13. 341-346 (1996)
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[Publications] Yasuda, M.et al.: "Regulation of atrial contraction in the seawater-adapted eel, anguilla japonica" Comp.Biochem. Physiol.113A. 165-172 (1996)
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[Publications] Uesaka, T.: "Synergistic action of neuropeptide Y and adrenaline in the eel atrium" J.Exp.Biol.199. 1873-1880 (1996)
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[Publications] Yokota, S.et al.: "Ion transport across the skin of the mudskipper, Periophthalmus modestus" Comp.Biochem. Physiol.118A. 903-910 (1997)
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[Publications] Kim, H.T.et al.: "Novel 〔^3H〕 clonidine binding sites in the intestine of the eel acclimated to sea water" Zool.Sci.15 (印刷中). (1998)