1996 Fiscal Year Annual Research Report
筋肉内でカルシウムの制御するアクトミオシン反応ステップの解明
Project/Area Number |
08640873
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
岩本 裕之 帝京大学, 医学部, 講師 (60176568)
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Keywords | 筋肉 / カルシウム / アクトミオシン / ATP分解反応 / キネティクス / 無機燐酸 / 骨格筋 / 力発生 |
Research Abstract |
骨格筋の収縮弛緩は細胞内カルシウムイオンの濃度([Ca^<2+>])により制御される。この制御はCa^<2+>がアクトミオシンのATP分解反応の特定のステップを調節することにより行われると考えられるが、実際どのステップが調節されるかは分かっていなかった。そこでCa^<2+>の調節する反応ステップを特定するための実験を行った。 材料にウサギグリセリン処理骨格筋線維を用いた。まず活性化液に20mMの無機燐酸(P_i)を加え、飽和[Ca^<2+>](pCa=4.4,pCa≡_-log[Ca^<2+>])と不飽和[Ca^<2+>](pCa=6.3)の条件で筋線維を活性化した。P_iの添加はアクトミオシンからのP_iの放出(=力発生)を抑え、A・M・ADP・P_i中間体の形に留める。2種の[Ca^<2+>]でのA・M・ADP・P_iの量を、筋線維の伸長に対する張力応答を指標に推定した。A・M・ADP・P_iに由来する張力応答は、[Ca^<2+>]を低下させると等尺性張力レベルにほぼ比例して減少した。つまり低[Ca^<2+>]でA・M・ADP・P_iが蓄積しないのでCa^<2+>が制御するのはP_i放出ステップ以前である。一方[Ca^<2+>]が十分低ければA・M・ADP・P_iは形成されない。即ち上の結果は、[Ca^<2+>]が制御するのはA・M・ADP・P_iの形成ステップであることを示している。 次に、A・M・ADP・P_iの形成の順反応と逆反応の、何れの速度定数が[Ca^<2+>]により制御されるかを調べた。逆反応(即ちA・M・ADP・P_iの解離)の速度定数は、伸長の速度を減じた時の張力応答の減少の時間経過を調べる事により推定した。飽和及び不飽和[Ca^<2+>]で推定された逆反応の速度定数はそれぞれ6.9s^<-1>と5.7s^<-1>で、殆ど差がなかった。従って、[Ca^<2+>]はA・M・ADP・P_iの形成の順反応を専ら制御すると考えられる。
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