1997 Fiscal Year Annual Research Report
染色体のGISH法とアロザイム多型を用いたイノデ属の進化に関する研究
Project/Area Number |
08640893
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高宮 正之 熊本大学, 理学部・環境理学科, 助教授 (70179555)
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Keywords | シダ植物 / イノデ属 / 染色体 / アロザイム / 倍数体 / 進化 / GISH |
Research Abstract |
日本列島におけるイノデ属(Polystichum)の種分化機構を明らかにするため、本年度は以下の研究を行った。 1.体細胞染色体数未知の株の染色体確認を行った。その結果コモチイノデ、キュウシュウイノデ、ナンピイノデ、アスカイノデが2n=82の二倍体であり、キュウシュウイノデ以外は減数分裂で41個の二価染色体を形成し、有性生殖をすることがわかった。このうち多くの個体数について分析できたナンピイノデとアスカイノデでは、アロザイムパターンから主に他殖を行っていることが明らかになった。 2.昨年2n=164の四倍体であることを明らかにしたイノデ、アイアスカイノデ、カタイノデ、サイゴクイノデ、イノデモドキ、ツヤナシイノデの生株について減数分裂を確認した結果、いずれも減数分裂中期に規則的に82個の二価染色体を形成し、有性生殖することが確認された。また、これらの株から得られた胞子を培養し前葉体でのアロザイムの分離を調べたところ、ヘテロな状態が分離しないfixed heterozygosityの状態であることがわかり、異質倍数体起源であることが確かめられた。 3.アロザイムの対立遺伝子頻度をもとに種間の比較をしたところ、四倍体同士は遺伝的に近い関係にあるものの、二倍体は四倍体とは遺伝的に離れていた。これより西南日本の四倍体種の起源には、今回用いた二倍体種の関与は低いことが判明した。二倍体と四倍体とのGISHでもゲノムの類縁性は低く、アロザイムの結果と一致した。 以上より、日本のイノデ属の種分化には異質倍数性が重要な要素として関与しているが、親となる二倍体種は今回の調査種でないことが明確になった。
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