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1997 Fiscal Year Annual Research Report

イルカの前肢帯筋の構成と系統発生学的意義の解明

Research Project

Project/Area Number 08640900
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionNational Museum of Nature and Science,Tokyo

Principal Investigator

山田 格  国立科学博物館, 動物研究部, 室長 (70125681)

Keywords鯨類(Cetacea) / ハクジラ亜目(Odontoceti) / 筋学(Myology) / 皮筋(Panniculus carnosus) / 僧帽筋(Trapezius muscle) / 系統発生(Phylogeny) / 副神経(Accessory nerve) / 比較解剖学(Comparative Anatomy)
Research Abstract

本研究では,昨年度マイルカ科の数種について,存在しないとされていた僧帽筋の確認をはじめ従来の形態学的記載にあまりに初歩的な問題があることを指摘した.従来の記載がきわめて不十分であるので今年度は,前肢帯筋群の支配神経に関しても基礎的な記載の再検討をおこなう必要が生じた.なお,昨年度の僧帽筋の存在に関する記載は第5回国際脊椎動物学会議(英国ブリストル)と97年度日本哺乳類学会(札幌)で発表した.また,本年度の神経叢に関する所見は世界海棲哺乳類科学会議(モナコ公国モンテカルロ)で発表した.
材料:マイルカ科マイルカ(Delphinus delphis)、ハンドウイルカ(Tursiops truncatus)、カズハゴンドウ(Peponocephala electra)
方法:イルカの頚部と体幹前部を人体解剖と同様にきわめて慎重に解剖し、筋と神経の詳細な所見を得た。所見はヒトをはじめとする陸棲哺乳類と対比し、イルカの筋系の系統発生学的な検討を行った。
所見:神経叢を概観すると,マイルカ科の腕神経叢は第4頚神経(C4)から第1胸神経(Th1)までの7分節に第3頚神経からの成分が少し参加する.神経叢の腹側層の神経には分節が高い方から,肩甲上神経(C3-6),横隔神経(C3-6),頭側胸筋神経(C3-6),筋皮神経(C5-Th1),中間胸筋神経(C5-Th1),正中神経(C5-Th1),尺骨神経(C5-Th1),尾側胸筋神経(大胸筋腹部と皮幹筋へ;C5-Th1)があり,背側層の神経には同じく,肩甲下神経(C5-Th1),腋窩神経(C5-Th1),橈骨神経(C5-Th1),胸背神経(C5-Th1)がある.
考察:これらの所見を陸棲哺乳類の所見と比較すると これらの形態は分節のズレをのぞくとヒトの腕神経叢の形態に類似している.また存在する神経の背腹の層序の点では陸棲の四足哺乳類と本質的には同一の原則で構成されている.しかし,筋の種類,形状ではヒトとの類似性が高く,一般の四足哺乳類とはかなりの相違があったことは興味深い.四足哺乳類では前肢帯筋は体重の支持が大きな要素を占めるのに対し,ヒトやイルカでは前肢(上肢)は体重の支持からは開放され,自由な可動性が大きな意味をもつ.このような機能上の類似性からヒト(霊長類)とイルカの前肢帯筋に収斂による類似性が生じた可能性がある.
以上のことからイルカを単に特殊な海棲哺乳類とするのではなく,陸棲哺乳類との厳密な対比をおこなってかれらの系統的な位置,あるいは哺乳類としての一般性と特殊性を明らかにするためにさらなる研究が期待される.

  • Research Products

    (1 results)

All Other

All Publications (1 results)

  • [Publications] Yamada,T.K., H.Ito & H.Takakura: "Is there no Trapezius in dolphins?" Journal of Morphology. 332 (3). 343 (1997)

URL: 

Published: 1999-03-15   Modified: 2016-04-21  

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