1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640902
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 忍 国立科学博物館, 植物研究部, 研究官 (50196515)
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Keywords | ツリフネソウ属 / 分類 / ヒマラヤ / 多様性 |
Research Abstract |
ヒマラヤ要素と呼ばれる植物の多くが、チベットから中国西南部(雲南、四川省)、ビルマにも分布を拡大し、さらにこれらの地域にはヒマラヤ要素種との類縁性が高い特産種も存在することが知られている。ツリフネソウ属のヒマラヤ要素のこうしたヒマラヤ地域外での特性を明らかにするため、中国西南部に分布するツリフネソウ属植物の形態学的比較研究と細胞遺伝学的な多様性の解析を行った。得られた結果を、ネパール・ヒマラヤにおける形態学的ならびに細胞遺伝学的多様性と比較した。その結果は以下の2点に要約しえる。 1 ツリフネソウ属植物について、実体顕微鏡を用いて、外部形態を解析した結果、特異な形態の距をもつ種があることが判明した。この種は、距が通常は外側に向かって伸長するのに対して、外側でなく内側に向かってあるという点で、ツリフネソウ属の中でも、非常に特異な種であり、このような距の存在は、送粉昆虫との関係において重要な意味をもつと考えられた。タイプ標本と比較検討した結果、この種は、中国西南部から報告のあるImpatiens nubigena W.W.Sm.であることが判明した。Impatiens nubigenaは、分布が雲南省西北部と四川省西南部にのみ限られ標高4000m付近に生育し、ヒマラヤ要素植物であることが判明した。 2 中国西南部においては、ネ-パル・ヒマラヤにおけるよりも形態的多様性と細胞遺伝学的な多様性が高いことが判明した。これは、ツリフネソウ属に関しては、中国西南部には、ネパール・ヒマラヤと同様なヒマラヤ要素植物が生育するだけでなく、ネパール・ヒマラヤではこれまでは知られていないインドシナ要素植物も分布を広げていることによると考えられた。中国西南部のツリフネソウ属植物については、これまでに知られているタイプ標本と外部形態的に比較検討した結果、5新種が判明したので、それらの記載・発表を行った。
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[Publications] Akiyama,S.,Ohba,H.& Wu,S.-K.: "Peculiar spur of Impatiens nubigena W.W.Sm. (Balsaminaceae)" Journal of Japanese Botany. 71(5). 263-267 (1996)
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[Publications] Akiyama,S.,Ohba,H.& Wu,S.-K.: "Futher notes of Impatiens (Balsaminaceae) from Yunnan,China" Bulletin National Science Museum,Tokyo,Ser.B. 22(4). 135-144 (1996)
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[Publications] Akiyama,S.,Ohba,H.& Wu,S.-K.: "Cytotaxonomic comparison of Impatiens distributed in Nepal Himalaya and Yunnan" International Symposium of Floristic Characteristics and Diversity of East Asian Plants,Abstract. 138- (1996)