1998 Fiscal Year Annual Research Report
シイタケの地理的系統に関する形態学的・遺伝学的研究
Project/Area Number |
08640904
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Research Institution | The Japan Kinoko Research Center Foundation |
Principal Investigator |
長谷部 公三郎 財団法人 日本きのこセンター, 菌蕈研究所, 研究員 (10124330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
霜村 典宏 財団法人 日本きのこセンター, 研究員 (00250093)
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Keywords | シイタケ / 地理的系統 / 交雑F_1 / 遺伝学 / 形態学 / 分類学 |
Research Abstract |
シイタケの地理的分布を異にする3集団(日本、パプアニューギニアおよびニュージーランド)の間では、子実体の形態的特性、アイソザイムパターンおよびミトコンドリアDNAのRFLPなどにおいて明らかな差異が認められ、これらをそれぞれ異種として扱うか否かは研究者によって異なる。本研究は上記3集団間の交雑F_1を形態学的・遺伝学的に分析することによって、シイタケの分類に関する問題解決の一助とすることを目的としている。 地理的系統間の交雑F_1,(27菌株)および親株(5菌株)を接種したほだ木から発生した子実体の形態を調査した。菌傘の色に関しては、地理的系統間および交雑F_1間で明瞭な差異が検出され、ニュージーランド産の傘色(濃茶褐色)>パプアニューギニア産の傘色(黄褐色)>日本産の傘色(茶褐色)なる遺伝的優劣関係が示唆された。菌傘の大きさ(平均1個乾重)に関しては、パプアニューギニア産の1個乾重が極めて小さく、これを片親とする交雑F_1の1個乾重も小さい傾向があった。菌柄の色に関しては、ニュージーランド産を片親に持つ交雑F1の菌柄は濃く着色するものが多く、この形質は傘色と同様に優性遺伝することが示唆された。 次に、交雑F1の子孫形成能力を検定するために、担子胞子の発芽率およびコロニー形成率、担子胞子由来一核菌糸の菌株内交配反応、交雑F_1および交雑F_2集団の菌糸伸長度を調査した。その結果、発芽率、コロニー形成率および交配反応においては、日本産同士の交雑F_1,の場合と比較して、特に異常は検出されなかった。菌糸伸長に関しては、日本産×ニュージーランド産の1組み合わせを除く、すべての組み合わせの交雑F_2集団において自殖弱勢が認められたが、日本産同士の交雑F_2集団においても同程度の弱勢を認めた。 以上のことから、シイタケの3集団間には種を分かつほどの大きな差異は存在しないものと推察され、これらはすべて同一種に所属するものと考えられた。
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