1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640909
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
高畑 由起夫 関西学院大学, 総合政策学部, 助教授 (90183061)
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Keywords | ニホンザル / 野生個体郡 / 屋久島 / 金華山 / 出産率 / 幼児死亡率 / 出生性比 / 生涯繁殖成功 |
Research Abstract |
1996年度は、8月に鹿児島県屋久島に生息する野生ニホンザル個体群を対象にして、その個体群動態を調べた。さらに、1970年代から蓄積された資料に基づいて比較した。その結果、当該個体群は(1)1974〜80年に大型群が分裂して小型群に分かれた。1981〜85年にかけてはそれらの小型群サイズが増大した。しかし、(3)1986〜1990年に群間の競争が激化したためか、いくつかの群れが出産率が低下するなどして消滅した。そして、(4)1991〜95年には別の群れが調査域に進入した、などダイナミックな個体群動態を示すことが明らかになった。長期調査をさらに継続して、ニホンザルの個体群動態を解析する予定である。 また、ニホンザルの雌の繁殖戦略を解析するため、屋久島と宮城県金華山の個体群の出産レコードから繁殖特性を分析した。その結果、(1)両個体群の雌の年間出産率は27〜35%で、餌付け群を下回る。(2)幼児死亡率は24〜25%で餌付け群より高いが、豪雪地帯の野生群の値より低い、(3)出生性比はほぼ1対1で、雌の順位による差は認められない。(4)雌の順位と出産率等に相関は認められない、等の結果が得られた。 一方、(5)屋久島での出産率は金華山よりも低いが、これは個体群密度が高いためかもしれない。(6)屋久島では雌のコドモの死亡率が雄のコドモよりも高いが、金華山では逆の傾向が認められる。これは、屋久島では雌間の競争が激しいことを示唆しているのかもしれない。(7)屋久島では小型群ほど出産率が低いが、金華山では逆の傾向を示す。これは、群れの平均サイズが小さい屋久島では群間競争が激しく、小型群の出産率を低下させること、群れの平均サイズが大きい金華山では群内競争によって大型群の出産率が低下するためではないかとおもわれる。したがって、ニホンザルの群れには雌の出産率について最適サイズが存在するかもしれない。これらの結果については、共同研究者とともに論文を作成して、現在投稿中である。
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