1997 Fiscal Year Annual Research Report
TiN被覆ステンレス鋼のピンホール欠陥と耐食性評価
Project/Area Number |
08650118
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
内田 仁 姫路工業大学, 工学部, 教授 (30047633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺澤 啓司 姫路工業大学, 工学部, 教授 (50047594)
井上 尚三 姫路工業大学, 工学部, 講師 (50193587)
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Keywords | 窒化物薄膜 / 高周波反応性スパッタリング / ピンホール欠陥 / 分極曲線 |
Research Abstract |
物理蒸着法(PVD)に代表されるスパッタリング法では非平衡的性格が強く、状態図に本来存在しない物質、あるいは熱平衡状態では作製に高温・高圧を要する物質でも比較的容易に作製できるため、TiN膜のような超硬物質のコーティングに威力を発揮してきた。しかしながら、コーティング膜の実用化に際して最大の課題は信頼性の向上にある。特に海洋構造物や医療材料の保護コーティング膜として今後、大いに期待される湿式環境下での実用化に対しては耐食性の問題は避けられず、これにはコーティング膜自体の組成・構造にも依存するが、本質的には環境遮断性すなわちピンホールなどの欠陥の有無が大きく関与している。 本研究では、高周波反応性スパッタリングによりTiN膜を作製し、非酸化性の酸類に対する耐食性薄膜としての有用性を検討する立場から、硫酸溶液中における耐食性を作製時のプロセスガス組成や膜厚に関連づけて調べた。その結果、以下の事柄が明らかになった。 1) NaCl構造のTiN膜は、窒素ガス混合比の増加と共に優先配向が<220>から<111>方位へ変化する。膜表面にはいずれも微小欠陥が認められるが極めて平坦であり、膜断面については柱状組織の様相を呈する。 2) TiN被覆材の臨界不働態化電流密度は膜圧の増加と共に減少するが、1.5μm以上になると逆に増加傾向を示す。膜表面には基板まで達したピンホール状の溶解跡や部分的な剥離が観察されるものの、TiN被覆により耐食性が改善されると言える。 3)臨界不働態化電流密度から求めたピンホールの欠陥面積率は,光学顕微鏡法により評価した真の欠陥面積率に比較的良く一致する。従って、このような電気化学計測法は耐食性ドライコーティング膜のピンホール欠陥評価法の一つとして有用である。 以上のように、TiN膜の最適作製条件を明示すると共に電気化学的なピンホール欠陥の定量評価が可能となったことにより、今後、腐食環境中で稼動する機器・構造物に対する信頼性評価技術の向上に寄与するものと期待できる。
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