1997 Fiscal Year Annual Research Report
トラクション油の断熱圧縮率の周波数依存性および圧力相転移評価
Project/Area Number |
08650172
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中村 裕一 三重大学, 工学部, 助教授 (20164345)
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Keywords | 高圧力 / 断熱圧縮率 / 潤滑油 / ブリルアン散乱 / 音速 / 密度 / ダイヤモンドアンビルセル / 相転移 |
Research Abstract |
本研究ではトラクション解析の基礎研究として、潤滑油の断熱圧縮率あるいは音速、密度をMHz〜GHz領域で求め、粘性、粘弾性、弾塑性などの力学的相転移の遷移域を明らかにすることを目的とし、本年度得られた知見など、研究実績を研究実施計画に従って以下に略記する。 (1)ダイヤモンドアンビルセル(DAC)装置を用いて高圧にてブリルアン光散乱実験を行い、トラクション油などの合成油について5GPaまでデータを得た。その結果、常圧で散乱角(周波数と同じ効果)の相違による8%程度の音速分散があったものが高圧になるとすぐに2〜3%となり、ほとんど分散はないことがわかった。減圧時には数十%減少し周波数分散とは考え難く、高圧装置の1軸加圧機構による固化油の非平衡状態での弾性定数の直交異方性と考えられ、加圧と減圧間で物性にヒシテリシスがある可能性を示した。 (2)MHz領域の液体の超音波実験および高圧超音波装置については、前年度のパルサーレシーバー超音波装置で高温での液体の音速を150°Cまで測定する装置を製作し、実験手法の確立を行った。高圧装置内部への圧電素子の取り付けは、DACにくらべ圧力室容積が約8倍になるため、予備実験で数百MPaしか圧力が発生せず、圧電素子などを小さくことを検討した。 (3)常圧における超音波実験結果(MHz)とブリルアン散乱実験結果(GHz)を比べ、トラクション油などでは断熱圧縮率はほぼ40%の相違となることがわかった。高圧については大野らの粘性、粘弾性、弾塑性の力学的相転移相図を2GPaまで外挿、検討し、それに高面圧のトラクション実験結果をプロットし、50°Cでは弾塑性域であり限界せん断応力がトラクション力を決め、120°Cでは粘弾性域と推察した。速度依存性(周波数依存性に相当)は超音波研究と同様[粘度]×[周波数]/[周波数無限大の横弾性係数]が3つの力学領域を決定し、速度増加は粘度増加と同じ効果がある可能性を見いだした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 中村裕一 ほか3名: "潤滑油の音速および弾性定数の周波数分散評価" トライボロジー会議予稿集. 216-218 (1997)
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[Publications] 川手克之 ほか3名: "Internal Pressure Distribution in Compressible Gasket by Bridgman Anvil" Abstracts of Int.Conf.on High Pressure Science and Technology (Joint Conf.:AIRAPT-16 & HPCJ-38). 1. 4 (1997)
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[Publications] 中島猛 ほか3名: "Computer Simulation of Plastic Deformation in High Pressure Apparatus" Abstracts of Int.Conf.on High Pressure Science and Technology (Joint Conf.:AIRAPT-16 & HPCJ-38). 1. 272 (1997)
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[Publications] 中村裕一: "潤滑油の粘弾性物性" トライボロジスト. 43,4. (1998)
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[Publications] 中村裕一 ほか2名: "Evaluation of Viscosity and Phase Transition on Mineral Oils up to 1.9 GPa and 150°C by DAC" The Review of High Pressure science and Technology Proceeding of Joint AIRAPT-16 & HPCJ-38. (掲載予定). (1998)
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[Publications] 中村裕一 ほか2名: "Evaluation of Viscosity for Synthetic Traction Oils by DAC and Traction Characteristics" Proc.Int.Sympo.on Microstructures and Mechanical Properties on New Engg.Materials. (掲載予定). (1998)