1998 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波リモートセンシングによる石狩平野の積雪・植生のモニタリング
Project/Area Number |
08650439
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Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
阿波加 純 北海道東海大学, 工学部, 教授 (40232079)
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Keywords | リモートセンシング / JERS-1 / 合成開口レーダ / マイクロ波 / 散乱断面積 / 積雪 / 植生 / 水田 |
Research Abstract |
地球資源衛星1号(JERS-1)のマイクロ波合成開口レーダ(SAR)で石狩平野を観測したデータの解析を行った。水田に注目して、SARの規格化された散乱断面積(NRCS)の季節変化を調べたところ、春は水田に水がはられているので、斜め方向から観測しているSARの電波は平坦な水面で大部分が鏡面反射され、衛星には戻ってこないためにSARの受信電力は低くなる(すなわち、散乱電力に比例する形で定義されているNRCSは小さくなる)。夏季には、稲による体積散乱によってNRCSは大きくなる。これらは、従来から知られていることと矛盾しない結果である。 他方、水田が積雪に覆われている冬季のデータを解析すると、従来、積雪時のNRCSは積雪が無い場合に比べて小さくなると言われているが、実際にデータ解析したところ、積雪があった方がNRCSが大きいという結果となった。今年度の後半は、JERS-1のLバンドSARで観測した積雪時のNRCSが、積雪が無い場合に比べて大きくなるという実験結果を説明するための、理論的検討に重点をおいて研究を行った。 JERS-1衛星搭載SARの偏波は送・受信とも水平偏波で、水平偏波に対しては表面散乱を摂動論で扱うと実験結果と良く合うとされているので、水田表面からの散乱を摂動論で計算した。水田表面の凹凸と含水率とが、積雪がある場合と無い場合とで変化しないと仮定すると、積雪による屈折の影響で、積雪が乾雪の場合には、積雪が無い場合に比べてNRCSが大きくなることが判明した。ただし、積雪が湿っている場合には積雪中の水によって電波が減衰し、減衰した分だけNRCSは小さくなる。他方、積雪が湿っていると、積雪から土壌に水分が補給されるため、積雪と土壌のインピーダンス不整合の割合が増えて散乱されやすくなり、NRCSが大きくなる。すなわち、積雪が湿っている場合には、積雪による電波の減衰と、積雪と土壌のインピーダンスマッチングの兼ね合いで、積雪がある場合のNRCSは積雪が無い場合に比べて大きくなり得ることが判明した。Lバンドという低い周波数での結果であるが、本研究で行った基本的考え方は、解析手法に体積散乱の効果を含めることで高い周波数帯の理論検討も適用できると思われる。
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