回折トモグラフィ法の高速・高分解能化と地下探査への応用

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08650503
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: Oita University
• Principal Investigator: 田中 充 大分大学, 工学部, 教授 (30091341)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 工藤 孝人 大分大学, 工学部, 助教授 (60225159)
• Keywords: 回折トモグラフィ / 3次元逆散乱問題 / ウェーブレット展開 / 地下物体 / 非線形最適化問題 / 改訂マルカート法 / 反復アルゴリズム / モーメント法

Research Abstract

今年度の研究目的は、ウェーブレット展開を導入して回折トモグラフィ法の高速化を図り、地下物体の不均質性が強い場合にも適用可能で耐ノイズ性に優れた探査アルゴリズムを開発することである。今年度の研究成果は、以下に示す通りである。
1.誘電体円柱による平面電磁波の散乱問題に対して、ウェーブレット展開を適用した場合の効果について数値的検討を行った。その結果、散乱電界を求めるために必要な係数行列式が疎行列になり、パルス基底関数を用いる通常のモーメント法を用いた場合と比較して、コンピュータメモリや計算時間を大幅に軽減できることが明らかになった。
2.ボアホールレーダを用いて3次元埋設物体の誘電率分布を再構成する逆問題について考察した。散乱電界の理論値と測定値との残差を最小にする非線形最適化問題に改訂マルカート法を適用し、物体の誘電率分布を反復的に求めるアルゴリズムを導出した。不均質性が強い損失性均質散乱体の再構成について数値シミュレーションを行い、受信電界の偏波にかかわらず精度の良い再構成結果が得られることを示した。
3.送受信位置の変化による影響を調べるため、自由空間中に置かれた3次元散乱体の誘電率分布を推定する方法について考察した。2と同様に、散乱パターンの理論値と測定値との残差の最小化問題に改訂マルカート法を適用した。不均質な損失性立方散乱体について数値的検討を行った結果、測定された散乱データに20dB程度のノイズが含まれる場合でも、少ない反復回数で良好な推定結果が得られることがわかった。
以上の結果より、ウェーブレット展開と改訂マルカート法を用いて得られた再構成法は高速で耐ノイズ性に優れており、地中埋設物の有効な探査アルゴリズムであることが明らかになった。本研究の継続が内約されている平成9年度は、FDTD法を適用して再構成像の高分解能化を実現する研究を行う予定である。

Research Products

• [Publications] 田中 充,平岡 孝啓 古奥 利幸: "3次元埋設物体の再構成" 1996年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1. 181- (1996)
• [Publications] T.Hiraoka, M.Tanaka W.-M.Boerner: "Three-dimensional inverse scattering of buried dielectric objects in cross-well geometry" Proc.6th International Conference on Ground Penetrating Radar. 223-228 (1996)
• [Publications] 古奥 利幸,平岡 孝啓 田中 充: "3次元埋設物体の誘電率の推定" 平成8年度電気関係学会九州支部連合大会講演論文集. 634- (1996)
• [Publications] 平岡 孝啓,古奥 利幸 田中 充,工藤 孝人: "3次元埋設物体の誘電率分布の再構成" 電子情報通信学会技術研究報告. A・P96-120. 9-14 (1997)
• [Publications] 工藤 孝人,田中 充: "誘電体円柱による電磁波散乱問題へのウェーブレット展開の適用" 1997年電子情報通信学会総合大会講演論文集 エレクトロニクス1. 17- (1997)
• [Publications] 平岡 孝啓,古奥 利幸 田中 充,工藤 孝人: "3次元散乱体の誘電率分布の再構成" 1997年電子情報通信学会総合大会講演論文集 エレクトロニクス1. 38- (1997)