1997 Fiscal Year Annual Research Report
サーマルサイフォンによる貯水池内の淡水赤潮集積機構の研究
Project/Area Number |
08650607
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
道奥 康治 神戸大学, 工学部, 助教授 (40127303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 徹 神戸大学, 工学部, 教授 (30029144)
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Keywords | 富栄養化 / 淡水赤潮 / 熱塩循環 / 閉鎖水域 / 水質環境 / 密度流 / 傾斜プルーム / 栄養塩集積 |
Research Abstract |
貯水池や湖沼の特定箇所に藻類が集積する現象とサーマルサイフォンとの関連性を現地観測と水理実験によって明らかにした.初年度は,深水部と浅水部の昇温・冷却能の遣いによって駆動されるサーマルサイフォンに注目した.しかし,観測データの解析を行うにつれ,熱浮力によって駆動されるサーマルサイフォンだけではなく,溶解物質の化学成層も重力循環流に強く影響している可能性が示唆された.とりわけ,貯水池底から嫌気的に溶出してきた物質の濃度浮力は池底に沿う傾斜プルームを発生させ,水質と熱を浅水部から深層へと対流輸送することによって,高濃度・高温の水塊が貯水池底層に形成されると推察された.そこで,第二年度においては,熱-化学成層の多重成層に着目して,「熱塩サイフォン現象」による物質集積過程に研究の視点を移した.熱塩サーマル流動を検出するために,池内の縦断・横断方向の水温・水質分布を定期的に観測した.また,熟塩サイフォンの機動力となる底質からの浮力溶出量を抑えるために,底泥を採取し溶出試験を実施した.一方,熱塩サーマルの発生が原理的に可能であることを確認するために,二次元貯水池模型において傾斜底面に浮力源を持つ熱塩循環の水理実験と数値解析を実施した.模型が小さいことによるスケール効果が現れるため,定量的な確認にまでは至らなかったが,熱塩サイフォンによる底層への熱と栄養塩の集積現象が確認された.本研究で着目した熱塩サイフォンは,逆転水温層形成の主要因と考えられる.しかも,嫌気性溶出による栄養塩の内部負荷を傾斜面に沿って深層へと輪送するために,底層水の密度が非常に増加し超安定で循環しない底質水を形成させてしまう.このような貯水池では,熱塩サイフォンが発生しない水域に比べると富栄養化にともなう水質障害がより深刻化する可能性が強いことが明らかとなった.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Michioku,K., Kanda,T., et al.: "Thermal Structure And Quality Chracteristics of Reservoir Water with Inverse Temperature Gradient" Memories of Faculty of Engineering,Kobe University. 43. 75-80 (1996)
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[Publications] 道奥康治・木村貢司: "カオス解析による河川水温の試み" 水工学論文集. 41. 605-610 (1997)
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[Publications] Kanda,T., Michioku,K., et al.: "Field Survey on Water temperature and Quality in A Reservoir with Unstable Stratification in Its Bottom Layer" J.Hydroscience and Hydraulic Engineering. 15-2. 41-48 (1997)
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[Publications] Michioku,K., Kanda,T., et al.: "Water Quality Behaviors in a Reservoir Having Anaerobic Heavy Bottom Layer Coupled with Inverse Temperature Gradient" Proc.27th Conf.IAHR. 1. 100-105 (1997)
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[Publications] 道奥康治・神田徹他: "底部に逆転水温層を有する部分循環貯水池の水質構成に関する研究" 土木学会論文集. 572/II-40. 33-48 (1997)
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[Publications] Michioku,K. and Taniguchi,T.: "Maps of Lakes' Thermal Regimes in Japan" Memories of Faculty of Engineering,Kobe University. 44. 15-32 (1997)