1997 Fiscal Year Annual Research Report
森林床が酸性雨による土壌環境の変化に及ぼす影響の定量的評価とモデル化に関する研究
Project/Area Number |
08650648
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
堀内 将人 京都大学, 工学研究科, 助手 (00157059)
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Keywords | 酸性雨 / 森林床 / 腐植物質 / 森林生態系プロセス / Alの溶出 / Alの存在形態 / モデル計算 / 将来予測 |
Research Abstract |
新たに構築したO層モデルの中で、本研究で実施したカラム実験に適用できるプロセスのみを抽出したモデルを再構築し、O層の模擬降雨実験に適用した。その結果、O層モデルによる計算結果は実測結果との良い一致を示したことから、本研究で構築したO層モデルはO層内での物理化学的酸性化過程を評価できると結論づけた。 さらに修正SMARTモデルをさらに発展させ、O層とA層の2層で構成される2層モデルを新たに構築するとともに、モデル中に酸の負荷・緩衝に関する森林生態系の諸反応プロセスを組み込み、カラム実験に供試した対象土壌を今後100年間での酸性化の将来予測を行った。日本の森林における種々の報告値を参考に、森林生態系において酸の負荷、緩衝に関与する諸プロセス(有機態窒素の無機化、アンモニア態窒素の硝酸化成、窒素と塩基性陽イオンの根からの取り込み、有機酸の生成)に関するパラメータ値を設定した。設定した各パラメータ値を基本とし、森林生態系の各プロセスによる土壌酸性化が平均的に進む、最も遅く進む、最も早く進むの3パターンのシナリオを設定した。酸性降下物量についても4パターンのシナリオを設定した。両シナリオを組み合わせ、合計12タイプのシナリオについて、今後100年間の土壌酸性化を予測した。その結果、生態系の各プロセスによる土壌酸性化が平均的、最も遅い、とシナリオ設定したとき、酸性降下物中の硝酸、硫酸濃度が増加しても、土壌の酸性化はおこらず、アルミニウムの溶出も見られなかった。これは、O層の交換性陽イオンによる酸緩衝の寄与が大きいと考えた。生態系の各プロセスが土壌酸性化を最も速く進めると設定したシナリオでは、今後100年間に土壌酸性化は進行し、アルミニウムの溶出が見られた。
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