1997 Fiscal Year Annual Research Report
瀋陽の歴史地区における清朝期の建築調査、並びに保存修復計画に関する研究
Project/Area Number |
08650725
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
三宅 理一 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70157618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 浩 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40213631)
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Keywords | 保存修復 / 歴史地区 / 古建築の活用 / 都市形成 / 満族 / 八旗制 |
Research Abstract |
研究目的 本研究の対象地である瀋陽は中国東北地方第一の都市であり、歴史的にも清朝時代の首都として重要な意味を持っている。また日本人には旧満州国泰天の名で知られ居り、1930年代の日本人による都市計画の実態解明も忌がれている。この瀋陽の故宮を中心とした歴史地区は清朝の様子を現在まで伝える貴重な例である。しかし、昨今都市開発の波がこの歴史地区まで及び、古い建造物が取り壊しの危機に瀕している。現時点において瀋陽の歴史と都市構造を日中で共同して調査し、記録・分析することは重要な意味を持っていると考えられる。さらに調査を前提とした都市計画の提言、古建築の保存修復に関する方法を提唱することを目的としている。また、この共同研究を通して、実地調査、研究の交換に加え、日中共同シンポジウムを開催して、中国における歴史都市の重要さを訴えることを目的とする。 調査の手順 本研究は瀋陽市規劃設計研究院を共同研究機関として、以下のような手順で進められている。 1)現存する遺構の実測調査を行い、その分析から建造物の編年と復元を行う。 2)現存する遺構の配置状況と、土地区画の図面を対照させ、都市形成の変化を追う。 3)瀋陽市の故宮を中心とした歴史地区と赫図阿拉を対象地とする。 調査の実施 1)中国での事前調査、打ち合わせ(1997年4月) 2)日本において、これまでの三宅研究室による調査研究と清朝期および満州時代の歴史的文献を用いた調査準備。(1997年4月〜8月) 3)共同研究者および三宅研究室のメンバーによる瀋陽および赫図阿拉の本調査。 1997年度瀋陽故宮周辺歴史地区調査 現在、故宮を中心としたこの地区は新しい都市計画の対象となっており、取り壊しが進行している。そのため至急実態を把握し、実測調査を行い図面化し分析する必要がある。今年度は共同研究機関である瀋陽規劃設計研究院の提案により、その重要度により1号から4号までの地区を設定し実測調査を行った。それぞれの地区において平面、立面、断面などの詳細な測量を行い、それにともなうヒアリング調査も行った。 1997年度赫図阿拉老城調査 満州の古都である、新寛満族自治県赫図阿拉老城内において、内城の形態や満族独特の住居形式などを調べるために、土地の起伏の測量や各住居の間取りなどについての実測調査を行った。この調査では満州族の民家の形態や明朝時代の住居形態などがその遺構から明らかになった。 今年度の調査の結果分析と今後の展望 現在1997年度の実地調査の資料を整理し、図面を作成し終えた。その結果と文献を照らし合わせて以下のようなことが分かった。 1)瀋陽市の故宮を中心とする歴史地区が、19世紀の清朝後期の都市型住宅の姿をよくとどめており、現在は分割して住まわれているが、その復元は技術的には比較的容易に出来ると考えられる。 2)赫図阿拉は瀋陽以前に清の太柤ヌルハチによって建立された最初の首都であり、遷都後もしばらく旧状をとどめていた。現在残っている遺構が清朝中期の官邸と、清朝の軍事制度である八旗の影響を色濃く反映している。 3)今後、1999年5月をめどに日本、中国、韓国による歴史的都市の保存活用に関する国際シンポジウムを開催する予定である。
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