1996 Fiscal Year Annual Research Report
初期痴呆性老人の残存機能と自立生活のための空間計画に関する研究
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08650739
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
狩野 徹 (財)東京都老人総合研究所, 生活環境部門, 研究員 (00204595)
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Keywords | 痴呆性老人 / 空間認知 / 施設計画 / 空間的情報 / 知覚機能 |
Research Abstract |
本研究では,以下の3点を明らかにした。 1.空間認知についての観察・実験 痴呆老人の,居室の把握状況をその目印とともに観察から捉えた。同時に,高次脳機能検査もおこない,残存している機能と実際の空間の把握状況との関連を見た。日常生活における居場所との関連では,デイルーム近くの居室の時はその位置を良く把握していたが,デイルームから離れた位置に変更した場合,その位置は把握でいなくなっている。新たな環境への適応が困難な点と,生活の領域と見えやすさとの関連が特に強いことが明らかになった。 2.自発的行為についての観察・調査からの物的環境条件の整理 建築的に工夫された施設を選び,訪問観察調査することで,自発的行為を保障するための基本的条件を整理した。大きな管理態勢の中に,入居者の属性にあわせていくつかの小さな介護単位あるいは生活単位があることが最も基本的な条件であることが捉えられた。関東中心に全国の最近の特別養護老人ホームの図面を整理し,この基本的条件の整備状況を明らかにした。建築的条件としてはいくつかの小さな介護・生活単位に分かれる可能性が捉えることができたが,実際の空間に即したケアがおこなうことができるかどうかが今後の課題であるとした。 3.空間的情報のあり方について 情報の中で,経年変化により認知の状況があまり低下しないものには自分の名前があるが,居室であることを示す名札の位置が見にくかったり特徴がなかったりして効果が少ないことが捉えられた。デイルームから見やすい位置の居室の把握状況,位置関係が簡単な場合は,経年変化による把握の低下が少ない。痴呆の進行が避けられないことから,日常生活場所と,空間配置のわかりやすさがそれを補うことを明らかにした。
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