1996 Fiscal Year Annual Research Report
生体吸収性骨接合用複合材料の開発とその機械的強度特性に関する研究
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08650802
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
江上 登 名城大学, 理工学部, 助教授 (80076629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 滋郎 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70065530)
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Keywords | 生体材料 / ポリ乳酸 / 水酸アパタイト / 複合材料 / 引張強さ / 圧縮強さ / 疲労強度 / 生体親和性 |
Research Abstract |
最近,『生体に優しい材料』の表現でポリ乳酸と水酸アパタイトの組合せによる新材料の開発が注目されている.水酸アパタイトは,骨誘導能などの優れた生体親和性を有するとともに,骨と直接結合して骨芽細胞による正常な骨形成が確認され,臨床成績も良好である.しかしながら,この種の材料は,脆性的性質を有するため,その用途は低荷重が作用する部位に限定されている.一方,ポリ乳酸は生体吸収性骨折治療用固定材料として,臨床応用に向けての研究が活発に行われている.しかしながら,これらの材料の疲労強度や加水分解による影響などについての研究報告はほとんど見当たらない.また,この両材料を複合化することについては国内・外でいくつかの報告があるが,それらはポリ乳酸中に水酸アパタイトを全体分散する方法である.この方法では,HAの脆性的性質に起因して比強度が著しく低下することは明らかである.また,強度を高める目的で非吸収性材料を配合する研究は一部でなされている.また,強度を高める目的で非吸収性材料を配合する研究は一部でなされているが,この場合は,高分子材料が加水分解することなく,体内に残存することになり,基本的には従来法と同一手法といえる. 以上の観点から,生体吸収性骨接合用複合材料の開発とその強度特性について検討を行った.その結果,以下のことが明らかとなった. 1)水酸アパタイト(HA)をポリ乳酸(PLLA)の表面層に分散する新しい医用複合材料の開発に成功するとともに,その複合化技術を確立した.複合材料の成型法としては,遠心成型法と押し出し成型法について検討を行ったが,後者の成型法が優れていることを明らかにした. 2)複合材料の引張りおよび圧縮強度試験では,PLLA中に分散するHAの分散量に依存し,最大で0.9の比強度を確保できることを明らかにした. 3)曲げを受ける複合材料の疲労強度は,PLLA中に分散するHAが切欠きや介在物としての作用をして低下するが,その低下割合は10%以下である. 4)生体親和性試験として,家兎骨部に埋植した複合材料周囲の骨生成状況を観察した結果,埋入後数週間経過段階でHAと骨の結合が観察された. 5)複合材料の生理食塩水浸漬による影響や熱による影響を検討中である.
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