1997 Fiscal Year Annual Research Report
リチュウム系酸化物の新しい電子伝導機構を利用した固溶体電極への初用
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08650812
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
井口 栄資 横浜国立大学, 工学部, 教授 (60017960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 瞭 横浜国立大学, 工学部, 助手 (40107371)
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Keywords | Li-二次電池 / 電極材料 / バルク電子伝導 / 誘電特性 / 緩和現象 / 構造相転移 / スモ-ルポラロン / ホッピング伝導 |
Research Abstract |
電池用電極として注目されているLi-系遷移金属酸化物のなかでも、LiMn_2O_4-系は既に実用の段階にあり、汎用されている。しかし、電極としての最も重要な電子伝導機構の解明は未だ不明な点が多く、またこれまでの研究は作成されたLiMn_2O_4-系試料の化学組成に対する注意深い考慮が欠如している。酸化物の化学組成電子伝導を含めた物理特性に微妙でかつ重大な影響を与える。本研究はこれらの問題点に着目して、LiMn_2O_4-系試料の電子輸送特性の本質の解明を目的としている。 スピネル構造をとるLiMn_2O_4を作成し、細心の定量分析の結果、一般に採用されている固相反応法で作成された試料は、従来予想されていた以上に陽イオン欠損状態にあり、その化学組成はLi^+_<0.95>Mn^<3+>_<0.51>Mn^<4+>_<1.38>O^<2->_4であった。この試料のバルク電子伝導度の温度依存性を複素平面インピーダンス解析法を用いて求めた。その結果バルク電子伝導は310K以上の高温熱活性化過程と250K以下の低温熱活性化過程に分かれており、加熱過程と冷却過程でその伝導度は明確なヒステレシスを示した。また測定された温度領域では、その温度依存性はsmall polaronのホッピングが電子伝導を与えている可能性を強く示唆している。さらに誘電特性に発現する緩和過程により、この可能性が現実の電子伝導機構であることが確認された。 低温熱活性化過程の活性化エネルギーは高温熱活性化過程のそれよりも大きく、絶縁体の常識から逸脱している。この非常識的現象と前述のヒステレシス現象は、温度変化によるFd3m-母相中のI4_1/amd-相の析出による構造相転移に起因している。 本研究で解明されたこれらの諸現象が電池電極材料に不可欠な耐高電圧性及び再充電機能をLiMn_2O_4に与えている。
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