1997 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属合金の耐食機能における不働態皮膜の電子構造の役割
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08650827
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
江崎 尚和 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 助教授 (80160357)
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Keywords | 遷移金属合金 / チタン合金 / 光電分極 / アノード分極 / 光電流 / 不働態皮膜 / 電子構造 / 腐食 |
Research Abstract |
本研究は、遷移金属合金の耐食性に大きく関与する不働態皮膜の電子状態を、光照射を利用した電気化学的手法により調べ、実際の耐食機能との比較から、合金の耐食機能の本質と皮膜の電子構造との関連を明らかにすることを目的とした。具体的には代表的な遷移金属であるチタン合金に注目し、純チタンおよび周期律表の3d(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)、4d(NbおよびMo)5d(Ta)遷移金属元素をそれぞれ5at%添加した合金に生成する不働態皮膜の電子状態の変化を実験的に調べた。また、分子軌道計算により、皮膜の電子構造計算を行い、実験との比較検討を行った。 Ti合金の不働態皮膜に光を照射すると、すべて正の光電流を生じる。すなわち、皮膜自体がn型の半導体特性を持っており、この基本的特性は添加元素によって変化しない。照射する光の波長を変化させて求めた光電流スペクトルの形状は、純Tiで得られるものと比べてそれほど大きな変化はなく、そこから得られる皮膜のバンドギャップは4.0eV付近であった。これに対して、表面皮膜のバンド構造の曲がりの大きさを表すフラットバンド電位は添加元素によって大きく変化した。Co,Cu,NbおよびTaを添加した場合は卑に、FeやMoを添加した場合には貴になる。フラットバンド電位の変化と皮膜の安定性の目安となる不働態保持電流密度との間には相関関係が認められた。電位の卑なものほど不働態保持電流密度は低く本電位が皮膜の安定性の目安になることが明らかとなった。皮膜の電子構造計算から求めたバンドギャップは実験値に近い値が得られたが、バンドの曲がりの大きさの原因となるフェルミ準位とフラットバンド電位の間には明瞭な関係は見いだせなかった。実験と理論計算との対応については今後もう少し詳細な検討が必要である。
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