1998 Fiscal Year Annual Research Report
中・近世期における金工材料と製作技法の歴史的変遷に関する研究
Project/Area Number |
08650857
|
Research Institution | Nara National Cultural Properties Research Institute |
Principal Investigator |
村上 隆 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (00192774)
|
Keywords | 金工品 / 中・近世 / 材料技術史 / 刀装具 / 青銅 / 黄銅 / キセル / 金属の色 |
Research Abstract |
中・近世期の遺跡の発掘調査が盛んになるにつれ、小柄や鐔などの刀装具とともに、キセルなど、当時の日常生活を反映する金属製品の出土が多数認められるようになってきた。しかし、これらの中・近世期の出土金工品の材質調査はこれまでほとんどおこなわれていないのが現状である。本研究は、伝世している金工資料に対する美術工芸史的研究に加えて、発掘調査によって出土した金工品に関する材料科学的な情報を蓄積していくことにより、わが国のこれまでの金工史を補完し、金属材料技術史として新たな視点を構築することを目的としている。本年度は、近世の金属生産の場として重要な位置を占める鉱山遺跡にも着目した。鉱山遺跡から出土する道具類やキセルなどはわが国の近世期の経済基盤を支えた鉱山における生活ぶりを推察することができる重要な資料である。また、中世から近世にかけて用いられた鏡も数点調査した。刀装具では、16世紀末の小柄類を新たに数点調査することができた。中世から近世にかけて用いられた仏具、特に銅鋺の材質調査により、古代から(銅-スズ)系、(銅-スズ-鉛)系、(銅-スズ-鉛-ヒ素)系、(銅-鉛-ヒ素)系、(銅-亜鉛)系と材質が変化していくことがわかった。また、「青銅」((銅-スズ)系)、「黄銅」((銅-亜鉛)系の中には、配合比により仕上がりの色が金色に近い色を呈するものがあり、これが「金」の代用として用いられた可能性があることが、地鎮具の出土状況などから推定できた。このように、金工品の色も古代から近世にかけても大きな意味を持つことを改めて認識することができた。
|