1997 Fiscal Year Annual Research Report
銀イオンまたは銀微粒子の存在するミセル溶液中でのケチルラジカルの挙動
Project/Area Number |
08650977
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐藤 智生 京都大学, 工学研究科, 助手 (50205944)
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Keywords | 銀コロイド / ベンゾフェノン / アセトフェノン / 増感光還元反応 / ミセル / ケチルラジカル / フォトリシス / 光アセトン法 |
Research Abstract |
本研究は2年計画で、単分散性の良い貴金属コロイドを再現性良く作製することのできる「光アセトン法」における、ケチルラジカルの挙動を明らかにし、その反応機構を解明する事を目的としている。光アセトン法は、貴金属イオン、ケトン類を含むミセル溶液に紫外光を照射する簡便な方法である。本年度は、ケトン類として、ベンゾフェノン(BP)だけでなくアセトフェノン(AP)も用い、種々の条件下で定常光照射を行うことにより、ケチルラジカルの介在した反応機構をAPの場合も含めて詳しく考察した。銀イオン、芳香族ケトン、界面活性剤(SDS)を含む水溶液に近紫外光を照射すると銀コロイドが生成し、それに伴い芳香族ケトンが減少した。今年度は、銀イオン電極を用いる事により反応中の銀イオン濃度の減少を正確に評価した。芳香族ケトンの減少および銀イオン還元の初期速度と、銀イオンおよび芳香族ケトンの初期濃度との関係から、3重項状態の芳香族ケトンが、ミセルを形成しているSDSから水素を引き抜きケチルラジカルになった後、銀イオンを還元し元の芳香族ケトンに戻るという反応スキームが提案された。一部のケチルラジカルは、水素を引き抜かれたSDSと再結合すると考えられ、その生成物は高速液体クロマトグラフィー分析により確認された。また、銀コロイドの表面プラズモン吸収帯のモル吸光係数は、反応初期に比べ反応後期のほうが大きいことから反応後期に、ケチルラジカルから銀微粒子に電子が注入されていると考えられた。また、標準的な試料にレーザーフォトリシスを行うことにより、BPのケチルラジカルが反応液中に生成することも確認され、種々の試料でのケチルラジカルの寿命比較も試みた。
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