1996 Fiscal Year Annual Research Report
ケテンを合成ブロックとして活用する新規有機分子構築法の開発
Project/Area Number |
08651018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 幸彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50201710)
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Keywords | ケテン / β-ラクタム / Staudinger反応 / フェニルエチルアミン |
Research Abstract |
ケテンは一般に反応性に富む不安定な分子種であり,単量体として存在し得る誘導体はごくわずかしか知られていない。ケテンはその構造的特徴から,特異な反応性を示すことが知られており,有用な反応剤であると考えられるが,一方でその不安定さから,合成反応への適用という観点からは,まだ十分な検討がされているとはいえない。本研究は,ケテンを活用する新しい立体制御法の開発,新しいタイプの反応の開発,温和な条件下での新しいケテン発生法の開発などを目的とする。 ケテンの代表的な反応の一つとして,イミンとの反応によるβ-ラクタムの合成法すなわちStaudinger反応が知られている。β-ラクタムは重要な抗生物質の主要骨格であり,合成的価値が高いため,Staudinger反応による立体選択的合成法の開発を行なった。まず、イミンの窒素上の置換基による立体制御を目指し,置換1-フェニルエチルアミンから誘導されるイミンを用いてフェノキシケテンとの反応を検討した。その結果,1-(2,6-ジクロロフェニル)エチルアミンから誘導されるイミンを用いた場合に高選択的に反応が進行し,対応するβ-ラクタムが高収率で得られることを見出した。次に,ケテン上の置換基による反応の制御を目的とし,不斉助剤としてエリトロー2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノールから誘導されるオキサゾリジノン部位を有するケテン設計した。このケテンは対応するカルボン酸から,脱水剤である2-クロロピリジニウム塩により容易に調製することができた。このケテンとイミンとの反応は多くの場合,完全に立体選択的に進行し,可能な4種の異性体のうち1種のみがほぼ定量的に得られ,β-ラクタムの光学活性体合成法として極めて優れた手法になることを見出した。
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