1997 Fiscal Year Annual Research Report
ケテンを合成ブロックとして活用する新規有機分子構築法の開発
Project/Area Number |
08651018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 幸彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50201710)
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Keywords | ケテン / 不斉合成 / [2+2]付加環化反応 |
Research Abstract |
ケテンは一般に反応性に富む不安定な分子種であり,単量体として存在し得る誘導体はごくわずかしか知られていない。ケテンはその構造的特徴から,特異な反応性を示すことが知られており,有用な反応剤であると考えられるが,一方でその不安定さから,合成反応への適用という観点からは,まだ十分な検討がされているとはいえない。本研究は,ケテンを活用する新しい立体制御法の開発,新しいタイプの反応の開発,温和な条件下での新しいケテン発生法の開発などを目的とする。 前年度までに,ケテンとイミンとの反応によるβーラクタムの合成法すなわちStaudinger反応について,ケテンあるいはイミンへの不斉源導入による立体制御法の開発について検討した。この過程において,不斉助剤としてエリトロー2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノールから誘導されるオキサゾリジノン部位を有するケテンを活用するStaudinger反応では,立体選択性,収率ともに極めて優れた結果が得られることを見出した。ケテンは,イミンとの反応の他,炭素一炭素二重結合への付加環化反応によりシクロブタノンを与えることも知られている。そこで,次に同様のキラルケテンとオレフィン類の反応を検討した。 まず,分子間反応により同様の反応を試みたところ,予期に反し生成物は複雑な混合物となった。そこで,分子内に二重結合を有するキラルケテンを調整し,これを用いて分子内環化反応の検討を行なった。その結果,この場合には円滑に反応が進行し,対応する環化生成物が高収率で得られることを見出した。立体選択性は置換基により77:23-91:9程度であり,Staudinger反応ほどの高選択性は観測されなかったものの,今後,不斉源の検討などを通じて,より高い立体選択性を実現できるものと考えられる。
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