1997 Fiscal Year Annual Research Report
クロム-アレーン錯体を用いた芳香族求核置換反応によるポリチオエーテル類の合成
Project/Area Number |
08651046
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
柿本 雅明 東京工業大学, 工学部, 教授 (90152595)
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Keywords | クロム-アレーン錯体 / 求核置換反応 / チオエーテル / 吸収スペクトル / 高速液体クロマトグラフィー / 脱クロム化反応 |
Research Abstract |
パラジクロロエンゼンとクロミウム-ヘキサカルボニル錯体を出発物質としてクロム-アレーン錯体を調製した。フェノール類、チオール類による芳香族求核置換反応を行い、生成物中の組成化を高速液体クロマトグラフィーにより算出した。 1)錯体の調製 従来の報告ではカラムクロマトグラフィーにより分離してから再結晶により単離していたが、錯体の溶液中での安定性を考慮してカラム分離精製物を昇華して目的物を単離した。構造はIR、NMRスペクトルにより確認し、融点(80-81℃文献値と一致した。錯体はヘキサン、クロロホルムなどの無極性溶媒からDMF、DMSOなどの極性溶媒などに対して優れた溶解性を示した。 2)クロム-アレーン錯体の安定性 この錯体の溶液中での安定性を325nm付近に見られる吸収スペクトルの変化により評価した。溶液調製後一時間ではDMF、DMSOなどの極性溶媒中では安定だが、無極性溶媒中では吸収強度が7割程度まで減少した。溶存酸素、水の影響を調べたところ、乾燥窒素中との差は観察されなかった。溶液中での配位子の交換、脱離などが主な原因と考えられる。 3)フェノール類、チオフェノール類による求核置換反応 DMSO中で求核置換反応を行い、一置換体と二置換体の生成比を高速液体クロマトグラフィーにより算出した。チオフェノールを用いたとき二置換体の生成〓が大きく増加した。チオエーテル結合はパラ位にある置換基に対する影響が少ないため、二置換体が多く生成したと考えられる。 4)酸化による脱クロム-カルボニル化反応 ヨウ素酸化による生成物の脱クルム-カルボニル化反応を行ったところ、定 的に生成物を得ることができた。錯体の安定性があまり良くないことが判明したため、現在までのところ重合反応に関する検討は行っていない。錯体の解離反応を上回る迅速な成長反応による重合系の構築が必要とされる。
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