1997 Fiscal Year Annual Research Report
体積相転移点付近にある一軸伸長ゲルの膨潤および応力緩和
Project/Area Number |
08651076
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
瀧川 敏算 京都大学, 工学研究科, 助教授 (50201603)
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Keywords | 高分子ゲル / 体積相転移 / 一軸伸長 / 膨潤 / 応力緩和 / 拡散 |
Research Abstract |
一軸伸長変形下ある高分子ゲルの膨潤と応力緩和を調べた.ポリアクリルアミド(PAAm)ゲルを用い,伸長変形下での膨潤の程度を表す尺度である平衡ポアソン比と平衡応力の値を測定し,理論値との比較を行った.この結果,PAAmゲルの平衡ポアソン比と平衡応力の値は各々理論から予想される値とほぼ一致することがわかった.さらに,35℃付近で不連続な体積変化(体積相転移)を示すポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPA)を用い,転移温度を挟む大きな温度変化(温度ジャンプ)を印加した場合のゲルの収縮の動力学を調べた.大きな正の温度ジャンプを与えた場合,印加直後にはゲルは急収縮を示すが,長時間経過すると直径の変化は単一指数関数で記述できるようになることがわかった.転移温度を挟む高温側への温度ジャンプ(昇温ジャンプ)あるいは収縮相内での昇温ジャンプでは,ゲルは白濁する.この白濁の解消の時間と収縮の緩和時間とが比例関係にあることから,両者は互いに密接に関係していることも明らかになった.膨潤状態および収縮状態にあるPNIPAゲルの力学試験を行い,弾性率の濃度依存性を調べた.その結果,収縮状態にあるゲルの架橋密度と膨潤状態にあるゲルの架橋密度との差異はゲルの体積変化だけでは説明できず,体積相転移により架橋点数が大きく変化していることがわかった.収縮相では,ゲル作製時に導入された化学架橋だけではなく,高分子鎖間の水素結合による物理架橋により網目構造が形成されていることがわかった.このゲルでの物理架橋は単一の水素結合が架橋点として働いているのでなく,いくつかの水素結合の連なりが架橋点(ドメイン)として働いているのであろう.
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[Publications] 瀧川敏算: "Osmotic Poisson′s Ratio and Equilibrion Stiess of Poly (acrylomide) Gels" Polym.J.28・11. 1012-1013 (1996)
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[Publications] 瀧川敏算: "Stress Relaxation of Poly (N-isopropylacrylamide) Gels in the Collapsed State" 日本レオロジー学会誌. 25・4. 207-209 (1997)
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[Publications] 瀧川敏算: "Change in Young′s Modulus of Poly (N-isopropylacrylamide) Gels by Volume Phase Transition" Polymer Gels & Networks. (1998)