1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08651092
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
寺本 徳郎 筑波大学, 構造工学系, 助教授 (00134213)
|
Keywords | 微小円孔 / き裂伝ぱ速度 / 軟鋼 / 介在物 / 結晶粒 / 粒界強度 / 粒界割れ / 残留応力 |
Research Abstract |
疲労破壊の発端となる場所のほとんどが孔、溝などの比較的大きな切り欠き部もしくは表面の傷、自然欠陥、非金属介在物などのいわゆる微小欠陥のような応力集中部である。構造物が最終破断にいたるまでのき裂の伝ぱ寿命の大部分がき裂の発生および微小き裂の伝ぱ寿命であるが、一般に長いき裂の伝ぱ特性に対しては破壊力学による定量的な取り扱いが有効である。これに対し、微小き裂の伝ぱは結晶粒界などの金属の微細組織に強く依存し、長いき裂の特性をそのまま当てはめることができない。本研究では一般構造物に多用される軟鋼SS41を供試し、微小な自然欠陥を模擬した人工円孔を三点曲げ試験片に導入し、そこから発生する疲労き裂の伝ぱ挙動を詳細に計測した。試験片加工による残留応力を軽減するため600度で1時間保持し、その後炉冷した。機械的性質には熱処理材と非熱処理材には違いがなかったが熱処理によって硬さがやや減少した。人工円孔の直径は0.2mmと0.5mmの2種類とし、円孔表面には降伏点程度の引張り応力が作用するように疲労負荷を加えた。き裂はいずれも、まず円孔の片側から発生し、その後反対側から発生した。き裂長さの計測は、両側のき裂長さと円孔の直径の和が試験片幅の50%程度になるまで行った。伝ぱ速度はき裂発生直後大きくばらつき、また円孔の大きさに依存しているが、いずれも両側にき裂が認められ、大きくなるにつれて伝ぱ速度は単調に増加していく。このばらつきはき裂長さが結晶粒径の数倍程度の大きさで生じており、光学顕微鏡によるき裂経路の観測から、伝ぱ速度は結晶粒界に支配されていることが分かった。また、SEMによる破面の微視観察では、微小き裂発生近傍では破面に凹凸が多く、一部粒界割れがみられる。これに対し、長いき裂に対しては破面は比較的平坦であり、結晶粒内にはストライエーションがみられ、安定したき裂伝ぱが伺われた。
|
Research Products
(1 results)