1996 Fiscal Year Annual Research Report
農作物における紫外線UV-Bのシグナル伝達と紫外線耐性機構の分子的解析
Project/Area Number |
08660001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
赤田 辰治 弘前大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (10250630)
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Keywords | 紫外線UV-B / ダイズ / カルコンシンターゼ遺伝子 / 紫外線誘導 / フラボノイド / MYB相同性転写因子 |
Research Abstract |
成層圏オゾン層の破壊による紫外線UV-Bの増加に備えるためにはUV-B耐性作物を育成することが急務である。本研究では植物の二次代謝産物の一つである紫外線吸光物質フラボノイド類が、紫外線照射によって表皮組織における蓄積を増し、照射線防御に重要な働きを持つことに着目した。このフラボノイド類の蓄積にはカルコンシンターゼ(Chalcone synthase,EC2.3.1.74;・CHS)の発現誘導が必要とされる。我々はダイズ(Glycine max cv Williams)chs遺伝子ファミリーの7つの遺伝子についてUV-Bによる発現調節を調べるための実験系を確立した。本年度において、その詳細な解析を進めたところ、第7遺伝子を除く全ての遺伝子がUV-Bによる発現の増大を示すことが明らかとなった。一方、これらの遺伝子のプロモーター領域に共通して見出されるH-boxの配列(CCTACC)は、トウモロコシにおけるフラボノイド合成の活性化因子であるMYB相同性因子Pの認識配列としても知られている。ダイズにおいては約二十種のMYB相同性遺伝子(myb-like)の存在を確認した。本年度はその中からUV-Bにより発現量の4倍から5倍に増大する遺伝子myb-like10及びmyb-like29の全長のクローニングを進めている。これまでに、myb-like10についてはほぼ全長のクローニングおよび塩基配列の解析が完了した。その結果、この遺伝子は翻訳領域前半のDNA結合領域においては他の植物から報告されたMYB相同性遺伝子に60〜70%の高い相同性を示したが、後半部分においては高い相同性を持った遺伝子は他に見られず、この遺伝子のコードする翻訳産物がユニークな機能を持った転写因子である可能性が示唆された。今後は、この転写因子が植物の紫外線応答機構にどのように関わっているかを調べる予定である。
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