1997 Fiscal Year Annual Research Report
栽培コムギの適応と分化に関するSCARマーカーを用いた解析
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08660008
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
加藤 鎌司 岡山大学, 農学部, 助教授 (40161096)
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Keywords | コムギ / 分子マーカー / 系統分化 / SCARマーカー / RAPD多型 |
Research Abstract |
世界の各地域に適応して栽培地域が広がった栽培コムギのうち,特に地形的にも変化に富み,日本との関係も深いアジア東部における遺伝的分化を明らかにするために,ゲノム中の大部分を占める非コード領域に加えて,自然及び人為選抜の対象となる遺伝子座における塩基配列の変異を解析した.結果の概要は下記の通りである. 1.中国及び日本のコムギ56品種におけるRAPD多型を解析した結果,中国西・北部の春播き栽培地域では多様な遺伝的変異が観察された.これに対して,中国東・南部,朝鮮半島及び日本では播性によって傾向が異なり,春播型品種群では遺伝的変異が小さく西・北部には見られないユニークなタイプに収斂していることが示された.従って,寒冷・乾燥条件の西域の春播き栽培地域から湿潤・温暖な東方の秋播き栽培地域への伝播に際して強力な選抜が加わり,ボトルネック効果によりユニークな品種群が成立したことが明らかとなった.一方,同地域の秋播型品種群では遺伝的変異が大きく西・北部と共通のタイプも多く見られたことから,西域のコムギとの直接的な関連が明らかになった. 2.中国の西・北部と東・南部では冬の寒さ及び登熟期の湿度条件が大きく異なるので,両地域間での生態的分化には,低温,乾燥,多湿などのストレスに対する適応力が関与していると考えられる.そこで,低温やABAにより誘導される各種遺伝子の塩基配列レベルでの変異を明らかにするために,構造遺伝子領域を特異的に増幅できるSCARプライマーセットを設計した.解析の結果,ABAにより誘導されるEmH2A遺伝子の3′側非転写領域においてPCR-RFLP多型が観察された.現在,本領域におけるPCR-RFLP多型の地理的変異と遺伝的分化との関係を検討中である.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 宮嵜朋浩・加藤鎌司・細野晶: "花粉不稔遺伝子の地理的分布から見たコムギ系統分化の解析II.イランから日本に至る地域における変異" 育種学雑誌. 47(別.1). 146-146 (1997)
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[Publications] 松本一信・鷲尾建紀・加藤鎌司: "東アジアのコムギにおけるRAPD多型と遺伝的分化" 育種学雑誌. 47(別.2). 146-146 (1997)
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[Publications] K.Iwaki and K.kato: "Geographical variation of Vrn genotype in wheat caused by the selection for adaptability to winter coldness." Proc.9th Inter.Wheat Genet.Symp.(Canada). (発表予定). (1998)
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[Publications] K.Kato, K.Matsumoto,他: "Genetic differentiation among wheat landraces with diverse geographical origin and its characterization by molecular analysis." Proc.9th Inter.Wheat Genet.Symp.(Canada). (発表予定). (1998)