1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08660018
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
片山 忠夫 鹿児島大学, 農学部, 教授 (10041617)
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Keywords | 稲属 / 栽培稲 / 野生稲 / 感光性 / 系統分化 |
Research Abstract |
本研究は稲が原産地から分布範囲を次第に拡大してきた過程に於いて、果した感光性の役割のうち、残された未解決の点を明らかにする目的で行ったものである。 従来の実験に用いてきた多くの材料に、平成6年度バングラデッシュで採集された系統まで加えて行った。栽培種2種(Oryza sativa,O.glaberrima)、野生種3種(O.perennis,O.breviligulata,O.longistaminata)から約300系統を用いた。 1.感光性と不感光性の類別判定(12時間明期)の実験では、栽培種の約70%、野生種の99%が感光性を示した。しかし反応の感度には種間及び地域間で非常に大きな開きがあった。 2.限界日長時間の概要(10〜15時間明期日長条件)の実験では、原産地の緯度とほゞ平行的に、高緯度分布系統ほど長いことが判った。地域内の変異は、地域,種などによて大きく異る。バングラディシュで採集された3集団のうち、アッサムに隣接した地点の集団が、非常に大きな集団内変異を示したことが特筆される。なお分化を継続していることは注目すべき現象である。 3.短日感応開始期に対する苗齢効果(20日苗齢〜40日苗齢)の実験では、栽培種に比較して野生種では、明らかに開始期が遅いこと、及びその変異は敏感な反応帯で連続的であった。 4.短日感応最少必要日数(1日〜30日間処理区)の実験では、最少8日であった。この数値は、従来の知見に比較して栽培種ではやゝ多く、野生種では少なく、種間の変異は少なかった。 5.短日処理累積効果(1日〜30日段階に長日処理条件を挿入)の実験では、高緯度地方原産の系統ほど累積効果が大きく、栽培種と野生種では大きな違いは無いことが、明らかにされた。 6.本研究により、稲属の進化や系統分化に果した感光性の役割と、幾多の栽培環境との関連とを明らかにすることが出来た。
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