1997 Fiscal Year Annual Research Report
雑草における一年生型,越年生型生活史の決定に関与する遺伝的プログラムの解析
Project/Area Number |
08660048
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉岡 俊人 東北大学, 農学部, 助手 (10240243)
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Keywords | 一・越年生雑草 / 未発芽種子バーナリゼーション / 生活史進化 / 冬季一年草 / 低温誘導遺伝子 |
Research Abstract |
一・越年生雑草の越年生型個体の花成刺激に対する感受性が冬期における緑植物体バーナリゼーションによって誘導されることは良く知られている。しかし,一年生型個体の花成刺激感受性を誘導する生態的,生理的機構については不明確であった。われわれは,平成8年度本課題研究において,一年生型生活環の成立にとって未発芽種子バーナリゼーションが鍵となることを生態的に明らかした。本年度は,未発芽種子バーナリゼーションによって発現する遺伝子,タンパク質を単離,解析することを目的とした. (1)サプトラクティブ・ディファレンシャル・スクリーニングを用いて,ヒメムカシヨモギの種子から低温によって発現した遺伝子を12クローン単離した,これをシークエンスした結果,6クローンは貯蔵タンパク質であるvicillinの遺伝子と,1クローンはシャペロンであるcalnexineの遺伝子と相同性が高かった.5クローンのセンス方向の解析では,類似する既知遺伝子は検索されなかった. (2)ヒメムカシヨモギ吸水種子へのシクロヘキシミド処理によって,花成刺激感受性が誘導された植物体が得られた.これは,発芽過程において合成されたタンパク質が未発芽種子バーナリゼーションに関与することを示唆している.未発芽種子バーナリゼーションの性質を持たないオオアレチノギクでは,シクロヘキシミド処理による花成刺激感受性の誘導は認められなかった. (3)日本各地のヒメムカシヨモギにおける一/越年生型個体の構成割合を調査したところ,寒冷地方で冬季の積雪が少ない地域では,一年生型個体の割合が高かった.特に,松本市由来のヒメムカシヨモギは,低温を与えなくても花成刺激感受性が誘導され,一年草としての生活環特性を獲得していた. (4)今後,(1)で得た遺伝子とシクロヘキシミド処理種子,松本由来個体種子からのmRNAとを用いたノーザン解析を行い,未発芽種子バーナリゼーションに関与する遺伝子を特定したい.
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