1996 Fiscal Year Annual Research Report
キチナーゼ遺伝子導入トランスジェニック植物の育種素材化と生体防御機構解析
Project/Area Number |
08660051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
阿久津 克己 茨城大学, 農学部, 助教授 (10151002)
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Keywords | トランスジェニック植物 / イネ・キチナーゼ遺伝子 / 病害抵抗性 / キュウリ / Botrytis cinerea |
Research Abstract |
イネより単離したクラスIキチナーゼのcDNA(RCC2)を導入したトランスジェニックキュウリ(品種:霜不知)における灰色かび病に対する抵抗性の増強を検討した。その結果、供試した当代株の約60%で抵抗性の増強が認められ、特に、CR32株で高い抵抗性の増強がみられた。これらの株では、PCR-サザン法によって、導入したRCC2の存在が確認され、ELISA検定からイネ・キチナーゼ産生量と抵抗性の増強に正の相関が認められた。また、これらの株におけるBotrytis cinerea胞子の感染行動を観察したところ、侵入前段階では抑制はみられず、侵入後の細胞内侵入菌糸の生育が著しく抑制された。さらに、TLC検定から低分子の抗菌性物質は検出されなかった。これらのことから、本病抵抗性の増強は主にキチナーゼの直接的な溶菌作用によることが示唆された。 次に、強抵抗性株のCR32株の自殖後代68株について抵抗性検定を行ったところ、当代株に比べて抵抗性の低下がみられたものの、約74%の株で灰色かび病に対する抵抗性の増強が認められた。これらの株では、RCC2の存在、その発現が確認され、RCC2導入による灰色かび病抵抗性の遺伝が確かめられた。また、強抵抗性後代株について、ρ-ニトロフェニル法によるキチナーゼ活性、B.cinerea胞子の感染行動及びTLC検定によるファイトアレキシンの検出を行った結果、これらの後代株の抵抗性は、当代株と同様にキチナーゼの直接的効果によることが示唆された。
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[Publications] 菊池紀幸: "イネ・キチナーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックタバコにおける糸状菌病害抵抗性操作の解析" 日植病報. 62. 301- (1996)
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[Publications] 北出早苗: "イネ・キチナーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックキュウリにおける灰色かび病抵抗性の増強" 日植病報. 62. 302- (1996)
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[Publications] Akutsu,k.: "Expression of rice chitinase in transgenic tobacco plants enhances resistance to the powdery mildew." Mol.Plant-Microbe Interact.(in press). (1997)
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[Publications] 岸本久太郎: "イネ・キチナーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックキュウリの自殖後代における灰色かび病抵抗性の増強とその操作解析" 平成9年度日本植物病理学会大会発表予定.